死去した声優がAIで復活 『サイバーパンク2077』 遺族の許可得て

遺族の完全な許可を得た上で、亡き声優がやり遂げられなかった最後の仕事を完成させた今回のケースは、いくぶん心温まるものだが、エンターテインメント業界でのAI使用は熾烈な論争の的となっている。

ストライキを行っていた全米脚本家組合は、製作会社側と合意した新契約の内容にAIをめぐる対策を盛り込んだが、この問題は同じくストを決行した全米映画俳優組合の交渉でも焦点となっているとされる。製作会社側は、俳優の肖像権がAIを通じて将来のプロジェクトで使用されることを認める契約を結びたがっている。

ゲームの声優たちも同様に、自分の声がRespeecherなどのツールで許可なく複製されていることを懸念している。『サイバーパンク』のケースでは許可が得られていたが、それ以外の事例では、声優の声が無許可で使用されているものばかりなのが実情だ。

『サイバーパンク』の声優たちも、その「被害」を受けている。私は、別の人気ゲーム『Starfield』向けにつくられたMODの中に、同作に登場するアンドレヤという女性キャラクターのセリフ4000件を、『サイバーパンク』の女性版主人公を演じた声優シェラミー・リーの声に置き換えるものを目にしたことがある。このMODはその後、削除されたもようだが、こうしたものがたった1人のファンによって作られたという事実は衝撃的だ。

この技術が今回、レチェクの功績を尊重するために使われたことはうれしく思うが、ゲーム業界全般でのAIに関する議論はまだ始まったばかりだ。今後出てくる話は、良いものよりも悪いものの方がはるかに多くなる予感がする。

forbes.com 原文

翻訳・編集=遠藤宗生

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