この広い海ではテレビ浜のルールは通用しません。だから、いま私たちは浜から離れて海に入りました。波待ちするサーファーのように、海にぷかぷかと浮かびながら、波を見つめています。次の波がよい波なのか、どの波が危険なのかを、日々観察しています。そしてよい波が来たら迷わず乗り、なるべく大勢の人を乗せて運ぶもうひとつの大波を起こすのです。その波に乗るサーファーの方々がBUZZの正体です。
いまヒップホップの世界では、フリースタイルやMCバトルが脚光を浴びています。フリースタイルの真骨頂は、ラッパーが発したライムに相手のラッパーが呼応し、新しいライムをぶつけ合うという文脈対決にあります。ラッパーたちのコール&レスポンス、波と波のぶつけ合いに見る人は熱狂するのです。今、企業と消費者のコミュニケーションは、それに近いステージに置かれている気がします。
海外でも同様の波が起きています。今年、フランスの高級ブランド・バレンシアガが発表したレザーバッグが、IKEAのショッピングバッグにそっくり、という事件が起こりました。それを見た海外のネットユーザーが、「そっくりじゃん!」とツッコミ、その波をキャッチしたIKEAがふたつの商品の見分け方を示す広告を展開。他のネットユーザーたちも敏感にその波に乗り、IKEAのバッグを素材にしたオリジナルの帽子やパンツをつくって次々にアップ。想像を超える大波が発生しました。バレンシアガのバッグが2145ドルなのに対して、IKEAは99セントという皮肉が、この波の原動力になっていると想像できます(*バレンシアガ自体、その価値の逆転をプロダクト開発の意図としている説もあります)。
BUZZサーフィンの波は、多くの国やジャンルで生まれています。そこで最後に私たちがサーフィンをする際の注意点をお伝えしておきます。ひとつは、海では陸よりも企業のキャラクター性が問われるということです。自分のキャラクターを理解して、海の仲間たちから愛されなければ、波に乗るどころかすぐに転覆してしまいます。
ふたつ目は、海のルールを学ぶということです。海には海の暗黙のルールがあります。広い海だからと、自分のルールで悪ノリしていると、総スカンを食ってしまいます。私たちは消費者と同じ海に入り、同じ波に乗り合うサーフィン仲間です。ルールとマナーを学んで、正しく海に入らなければいけません。海には危険がつきものなのです。
電通総研Bチーム◎電通内でひっそりと活動を始めていたクリエイティブシンクタンク。「好奇心ファースト」を合言葉に、社内
外の特任リサーチャー40人がそれぞれの得意分野を1人1ジャンル常にリサーチ。現在50のプロジェクトを支援している。平均年齢約35歳。
川上宗一◎電通の営業マン。日清食品カップヌードル・どん兵衛、ソニーミュージック、吉本興業、Honda等を担当。得意領域は新規事業とコンテンツビジネス。今回の執筆協力は尾上永晃。