各界で活躍するエグゼクティブが一堂に会し、拳を交える異色の大会は、活躍の舞台をリングからビジネスに移したかつてのトップファイターだからこそ作り出せた。熱狂の闘いについて、Forbes JAPAN Web編集長の谷本有香が、2回にわたり話を聞いた。
エグゼクティブたちがプロ同然の舞台で戦うワケ
──まず「EXECUTIVE FIGHT BUSHIDO」開催のきっかけについて聞かせてください。以前から経営者のお知り合いは多かったのでしょうか。
2009年に引退した後、セカンドキャリアについて考えていたときに、たまたま友人の経営者から「格闘技を習いたい」という話を受けたことが始まりです。当時、彼らとのトレーニングや食事会の中で、現役時代のリングに上がるための準備や、試合前の緊張などが話題に上がることがありました。経営者の方から、「それは経営に生かせる」という声をいただき、自分の考えをまとめた書籍を出版したところ、人脈が広がっていきました。
実際、格闘技を教えることで自分が学ぶことも多く、著名な経営者のスケジュールやルーティンワーク、習慣など、現役時代には知り得ないようなことを私も教わったと言えます。
──経営者とは、教え、教えられる関係だったと。
そうですね。多くの経営者から、格闘技を盛り上げていくための素晴らしいヒントをいただきました。そして、私も彼らに格闘技がどのように役に立つのかをつねに考えていました。そうした中、「トレーニングの目標を持ちたい」という経営者の声がきっかけで、「EXECUTIVE FIGHT BUSHIDO」のアイデアが生まれたんです。トレーニングの目標は、フィジカルやスタミナの向上など、人それぞれ。私は最終目標が、「リング」にあると考えました。
だけどアマチュアの大会のように、ゼッケンをつけて「1番と2番が戦ってください」と言われ、ただリングに上がって戦うだけではつまらない。それなら、私が現役時代に経験したような舞台に上がってもらいたいと考えました。
「EXECUTIVE FIGHT BUSHIDO」では、リングや照明がプロ仕様であることはもちろん、選手入場のコールを、日本の格闘界を迫力ある声で彩ってきたレニー・ハートさんに依頼。試合前に「煽りV」と呼ばれる出場選手一人ひとりのバックグラウンドや試合への意気込みなどを紹介する映像も制作するなど、すべてプロと遜色ない舞台を用意しています。
さらに、対戦カードも試合の約40日前までには発表しているので、各選手は対戦相手の身長や体重はもちろん、ファイトスタイル、試合中の動きなどもすべて調べ上げていきます。対戦相手を徹底的に研究し、戦略を練って戦いに挑むところは、経営とどこか似ているかも知れません。
──大会にはどのような方々が参加されているのでしょうか。
楽天の代表取締役副社長や楽天野球団の代表取締役社長などを務めた島田亨さん、大手SNSプラットフォーマーの元代表の方などがトレーニングをしています。後者の方は大会にも出場して、初戦こそ負けてしまいましたが、その後は連戦連勝。今も週3回トレーニングをしています。