これからはすべてハイブリッドか電気自動車という2023年に、史上最後の6速MT搭載のMカーが登場した。その名はM2。Mとは、BMW社の中の特別高性能部門「Mディヴィジョン」のこと。BMW車の各シリーズの選り抜きを、「Mディヴィジョン」で性能にさらなる磨きをかけて完成させるのがMカーだ。
したがって、Mカーは「ドライバーズ・カー」であり、「エンスーにアピールしたかったので、6MTの必要性まで議論した」と、Mの技術者たちは言う。 だから、先代のM2で6MTを装備していたのは、わずか10パーセントだった。
しかし、新M2は標準が8速ATで、オプションとして6MTに変えられる。そして、これが最後の後輪駆動Mカーとなるだろう。 そこで今回は、顧客の9割が乗ると言われる8AT仕様に試乗した。
M2は、「Mディヴィジョン」の中で、最もコンパクトな車両だ。そのアーキテクチャーがBMWの全FR系モデルで共有される「CLAR」となり、しかもインテリアの基本デザインまでがM3やM4と共用化された。
エッジーでかなりアグレッシブな同車は、ボリューミーなスタイリングになっている。ブリスターフェンダーは特に格好いい。「M3」や「M4」が縦型の大型キドニーグリルを採用するのに対して、「M2クーペ」は横長のフレームレス・デザインを採用している。試乗車のノーズには、BMW M社の50周年記念仕様のエンブレムが備わっている。とにかくリアビューミラーにM2の顔が見えてきたら、飛び退きたくなるほど迫力があると思う。
内装は外観ほど派手ではないものの、何か特別なクルマのハンドルを握っているような気分にさせる工夫が、細部にも十分凝らされている。例えば、ステアリングホイールにはコントラストステッチが施され、2つの赤いドライビングモードボタンがそれだ。重厚なボルスター付きスポーツシートが装備され、さらにグリップの良いカーボン製バケットシートにアップグレードすることもできる。
優れたiDriveインフォテインメント・システムは、使い勝手の良いオペレーティング・システムで、Android AutoとApple CarPlayのスマートフォン・ミラーリングも利用できる。すべてが10.3インチのタッチスクリーンに表示されるが、フロントシートの間に回転式コントローラーも用意されており、運転中はスクリーンにタッチするよりもはるかに気が散らない。