北米

2023.10.13

ペンシルベニア大、反ユダヤ主義を否定 富豪卒業生の批判に反論

米ペンシルベニア州フィラデルフィアにあるペンシルベニア大学(Shutterstock.com)

米富豪のマーク・ローワンが、自身の出身校であるペンシルベニア大学が反ユダヤ主義的な意見を容認していると批判し、学長と理事長の辞任を要求した。同大は学長と理事長を擁護するとともに、これまでに学内で反ユダヤ主義撲滅に向け積極的な取り組みを行ってきたと反論している。米国の大学ではこのところ、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルとの間で起きた大規模な紛争をめぐる論争が相次いでいる。

米プライベートエクイティ(PE)投資会社アポロ・グローバル・マネジメントの最高経営責任者(CEO)であるローワンは、ペンシルベニア大学ウォートン・スクール諮問委員会の委員長を務めている。

ローワンは11日、新興メディアの「ザ・フリー・プレス」に寄稿した論説で、同大を反ユダヤ主義的と非難し、卒業生や寄付者は「リズ・マギル学長とスコット・ボック理事長が辞任するまで小切手帳を閉めておく」べきだとして、寄付の見合わせを呼びかけた。

ローワンは特に、9月に同大で開催されたパレスチナ文学祭を問題視し、このイベントでは講演者が「ユダヤ人の民族浄化を提唱し、ユダヤ人を『欧州の入植者』と呼び、さまざまな血の中傷(ユダヤ人が異教徒の子供を殺しその血を飲んでいたという偏見に基づく中傷)を繰り返した」と批判した。

これに対し、同大のジュリー・プラット副理事長は電子メールによる声明で、マギルとボックへの支持を表明し、理事会は「大学がとった行動を全会一致で支持する」と説明。一方で「ハマスによるイスラエルへの恐ろしい攻撃」の被害者への連帯を表明し、「憎悪に満ちたテロ行為」を非難した。

米国では他の大学でも、イスラエル・パレスチナ紛争をめぐる論争が起きている。バンダービルト大学のダニエル・ディアマイヤー学長は今週初め、この紛争には「深く折り重なり、微妙な意味合いを含んだ複雑性」があるとする声明を発表し、X(旧ツイッター)上で反発を呼んだ。

ハーバード大学では、学生団体の「ハーバード学部生パレスチナ連帯委員会」が、一連の暴力はイスラエル側に「全面的に責任がある」とする声明を発表。同大の学長も務めた経済学者ローレンス・サマーズはその2日後、Xへの投稿で、大学側がすみやかに対応をとらず沈黙したのは「ユダヤ人国家イスラエルに対するテロ行為に対して、よく言って中立」の立場であるという印象を与えたと批判した。

著名投資家のビル・アックマンもXへの投稿で、「複数のCEO」から、声明に署名した各学生団体の名簿を大学側は公表しないのだろうかと尋ねられたことを明かし、この声明に賛同した学生は自らの企業で採用したくないとの意向を示した。

forbes.com 原文

翻訳=上西雄太・編集=遠藤宗生

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