現在、越境者数は過去最多を記録している。今年8月には1日平均5700人の不法移民が摘発されたが、逮捕を免れた不法移民も大勢いる。国境警備はパンク状態だ。当然、武装した過激派の入国を許す恐れがあり、すでに入国を果たしているかもしれない。
イスラエルは10月7日、境界の警備に失敗すれば国内の安全が脅かされることを学んだ。米国は、まだこの教訓に耳を傾けていない。移民問題をめぐる政府の最終方針が何であれ、領土に入ってくるのが何者か、また悪意を持っている可能性のある者をどうやって阻止すべきかを、国家が知っておく必要があるのは常識である。
市民の準備不足
ハマスの越境攻撃を受けてガザ境界付近に住むイスラエル市民が陥った混乱ぶりは、十分に裏付けのある危険に対する備えが民間に欠如していたことを示唆している。ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地ならば、用心深い入植者は常に銃を携帯してもいようが、イスラエルの多くの地域では銃所持は禁止されている。民間人260人が死亡した音楽祭も、銃の持ち込みは禁じられていた。この事実は一概に、米国人を武装させよという議論にはつながらない。米国とイスラエルでは事情が異なる。ただ、緊急時の対応について市民がある程度理解しておく必要性があることは、浮き彫りになった。仮に米政府に民間人の備えを強化するための首尾一貫した計画があるとしても、その計画は秘匿されている。
いつかネットワークが使えなくなり、停電が起き、水道水が飲めなくなる日が来るかもしれないのに、これでは不安だ。そうなった場合の通常の対応は外部に支援を求めることだが、国家の危機においては現実的ではないかもしれない。
米政府は、サイバーセキュリティーなど一部分野を除いて民間の備えに関する統計を取っていないが、ほとんどの一般市民は真の危機に際してどう動くべきか、漠然としか考えていない可能性が高い。今回のイスラエルから学ぶべき最も基本的な安全保障上の教訓は、いざ危険に見舞われたときに生き残るための計画が国民には必要だということである。
(forbes.com 原文)