経営・戦略

2023.10.15 13:30

BtoBとBtoCで人格が変化? 新規事業に成功した経営者の共通点

もともとB to Bの事業者が、 B to C向けの新商品を開発し、ヒットさせるケースが増えている。その理由とは? マクアケ創業者による好評連載第34回。

私が事業を行うなかで出合う商材やサービスは、基本的に消費者向けのものが多い。それらを提供するのはいわゆるB to C企業だが、そのなかには、もともと金属加工や縫製の下請けだったり、機械の部品メーカーだったり、企業を顧客とするB to Bの事業体だった会社が多く存在している。しかも、そうした企業は増え続けている印象だ。当然成功する事業者もあればそうでない事業者もあるわけだが、成功する事業者に共通点があることに気づいた。今回はこの部分について考えたいと思う。

B to B事業は消費者向けのB to C事業に比べて顧客課題が非常にわかりやすく、言語化もしやすい。そのため、企業としての経済合理性が優先されやすく、顧客課題の解決を正解として提供物を磨いていくアプローチがとられる。一方で消費者向けのB to C事業は、経済合理性のみではなく、むしろ消費者の感情やトレンド、環境や総合的な体験などの変数が多く入り組むため、目指すべき正解をイメージしたり、言語化したりするのが相対的に難しいものだ。

モノや体験の応援購入サービスを運営する我々マクアケも、事業者に出品していただくという意味ではB to Bであり、消費者に購入してもらうという意味ではB to Cでもある。その両サイドを見続けてきた私自身、B to B向けとB to C向けの商品について考えるときには脳みそを完全に切り替えている。そしてまさに先日、岐阜の関市にある福田刃物工業という会社を訪れた際に、同じように脳みその切り替えを行っている人物を目の当たりにしたのだった。

福田刃物工業は120年以上の歴史をもち、機械に取り付ける刃物部品の製造を主軸に、B to Bの金属加工業を高い技術力で展開している会社だ。その福田刃物工業が昨年初めて、消費者向けの新事業に乗り出した。ダイヤモンドに次ぐ硬さを誇るという超硬合金を使った包丁を「KISEKI:」というブランドで売り出し、勢いよく売り上げを伸ばしている。その包丁は本業で培ってきた難度の高い超硬合金の加工技術力から生まれた。しかし、単に機能性に優れているだけでなく、持ち手は地元・岐阜県産の広葉樹にこだわり、樹脂製の口輪も地元企業と開発。そのストーリーやデザインに込めた思いなど、一貫した世界観で製品ブランドを表現している。
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文=中山亮太郎 イラストレーション=岡村亮太

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年11月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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