このソフトウェアを病院に無償で提供しているイスラエル企業Corsight AI(コルサイトAI)社の上級副社長のオファー・ローネン(Ofer Ronen)によると、同社のシステムは、入院患者の顔を撮影し、家族から送られた写真と一致する人物を発見するという。
コルサイトAIは、家族からの電話が病院に殺到しているというフェイスブックの投稿を見た後に、ソロカ医療センターに支援を申し出たという。病院はその後、家族が行方不明者の写真を送るための専用メールアカウントを開設し、患者の写真と照合できるようにした。「今では比較的短時間で、家族に安らぎを与えることが可能になった」とローネンは述べている。
戦争の負傷者や死亡者の身元確認に顔認識システムが用いられるのは、これが初めてではない。フォーブスは昨年、ウクライナが物議を醸す顔認識テクノロジー企業Clearview AI(クリアビューAI)のソフトを使用して、死亡したロシア兵を識別していると報じた。ただし、このオペレーションの目的は、ロシア兵の親族らにプーチンの侵略が引き起こした戦争の結果を示すことにあり、情報戦争の側面を持つものだった。
コルサイトAIは、顔の一部の画像から身元を割り出すことができると主張している。パンデミックの初期の2020年に、同社は500万ドル(約7億5000万円)のシード資金を調達し、マスクや保護ゴーグルを着用した人物の身元を特定可能だとしていた。さらに、人のDNAを採取して顔のデジタル画像を作成し、顔認識データベースと照合する技術にも取り組んでいると主張しているが「専門家は科学的に不可能だと指摘した」と、昨年のMITテクノロジーレビューの記事は報じていた。
コルサイトAIは、同様のテクノロジーによる支援を今年の地震で5万人の犠牲者を出したトルコ政府にも申し出ていたが、その際は他社のソリューションが選ばれた。しかし、震災後に現地メディアは、顔認証テクノロジーが親とはぐれた子どもを家族と再会させるのに役立ったと報じていた。
コルサイトAIは、人工知能関連のビジネスを行う企業のCortica Groupの子会社として2019年に設立され、トロントを拠点とするAWZ Venturesの支援を受けている。AWZ Venturesは多くの監視ビジネスに投資しており、顧問にはスティーブン・ハーパー元カナダ首相や、ジェームズ・ウールジー元CIA長官らが含まれている。
コルサイトAIのチーフ・プライバシー・オフィサーは、英国内務省の監視カメラ委員を7年間務めていた。また、同社の研究担当副社長はイスラエル空軍のサイバー戦争担当官を務めていた。
(forbes.com 原文)