生成AIが2023年最大のテクノロジーであることは間違いないが、分析会社CCS Insightは、今年の盛り上がりは2024年にはコストとリスク計算という厳しい現実に取って代わられると予測している。
CCS Insightの主席アナリスト、レオ・ジェビーは、「今年もうすでに、転換期の予兆は出ています」と語る。「今年の初めの段階では、生成AIに関する会話は、テクノロジーの約束に対する興奮やそれが実現すること、私たちにもたらされる素晴らしいものの話ばかりでした」。
しかし、大規模にAIを運用するための、何百万、何千万ものクエリーを実行するための膨大なコストが、企業を圧迫し始めているため、そうしたコストがいずれ消費者や企業に転嫁されることになるだろう。「クラウドでの生成AIのようなクエリの実行コストは、従来のクラウドでの検索クエリの実行に比べてはるかに高価なのです」とジェビーは語る。
「来年には少し冷たいシャワーを浴びることになるでしょう」と彼は付け加えた。
損失を生むAI
今週初めに発表された『ウォールストリート・ジャーナル』の記事によれば、マイクロソフトは今年初めに同社のコード作成AIであるGitHub Copilot(ギットハブ・コパイロット)でユーザー1人当たり平均20ドルの損失を出していたという。それが、来月登場するMicrosoft 365 Copilot AIのユーザー1人当たりの価格が、30ドルという比較的高い価格に設定された理由かもしれない。ジェビーは「マイクロソフトは実に興味深い例で、コパイロットを直接製品化し、そのために追加料金を請求しています。しかもそれは、決して取るに足らない金額ではありません」という。
「その導入を検討しているビジネスや企業にとっての大きな問題は、組織のために毎月いくらの価値を取り戻せるのかということなのです」。
AIリスクの管理
来年、企業が取り組まなければならないのはAIのコストだけでなく、政府による規制の脅威も迫っている。「生成AIをめぐって、より大きな規制が見え始めるという予想があるのは確かです」とジェビーはいう。コストの増大と負担の大きい規制による負担の組み合わせは、企業が生成AIの導入に二の足を踏むことを意味する。ジェビーは「来年は、生成AIの熱狂的なファンが少し減少すると見ています」と付け加えた。
人間への回帰
AIへの熱狂が薄れる一方で、2026年までには、AIが生成したコードに生命を吹き込む人間のプログラマーへの需要が復活するとこの分析会社は予測している。CCS Insightは年次予測レポートの中で、「AIによって強化または作成されるコードは、間違いなく革新的なソリューションの開発に役立ち、ソフトウェアの脆弱性を特定し、緩和する上でも価値がある」と書いた上で、「しかし、特に非線形アプローチにおける革新と創意工夫という人間のひらめきは、熟練した経験豊富なプログラマーの専門分野となる。特に仕事を始める際の敷居の低さは特筆される」と続けている。
(forbes.com 原文)