ディズニー、ゲーム大手EA買収を検討? 実現なら誰得の悲劇に

安井克至

開発タイトルの制約

EAはディズニーという巨大企業の傘下に入ることで、開発するゲームについて上層部の決定に従う必要が出てくる。ディズニーは、スター・ウォーズやマーベル、あるいはその時々に強化したいコンテンツに合わせたゲームを増やすよう指示するかもしれない。スポーツゲーム全般や『エーペックスレジェンズ』などの人気タイトルの一部は残るだろうが、開発者の多くは、ディズニーの手先となってライセンス作品の開発を際限なく続けることを快く思わないかもしれない。

外部スタジオ作品への影響

ディズニーのEA買収により、スター・ウォーズとマーベルのゲーム化の権利はEAが無期限に独占することになるかもしれない。現在、EA以外のさまざまなスタジオが、スター・ウォーズの世界を舞台にしたおもしろいゲームを開発中だが、それも変わる可能性がある。ソニー傘下のインソムニアック・ゲームズ(Insomniac Games)が開発中のウルヴァリンやスパイダーマンを主人公としたゲームが取り上げられることはないかもしれないが、将来のマーベルゲームがEAの独占となる可能性はある。『Marvel's Guardians of the Galaxy』のように、商業的には「失敗」した作品でもとてもおもしろいゲームは多くあり、そうした作品は1社独占体制であればきっと誕生しなかっただろう。



ディズニーのEA買収が実現する可能性はどのくらいあるのだろうか? アイガーは腹を決めかねているかもしれないが、ディズニー関係者の多くがゲーム業界への参入を求めているのは明らかであり、EA側も適切な価格で身売りに応じる用意があるようだ。ディズニーの時価総額は1555億ドルで、EAの347億ドルよりも大きいことは確かだが、EAの価値はディズニーの20%に相当するため、簡単に買える額ではない。ただし、規制当局の承認はおそらく問題とならないだろう。マイクロソフトのアクティビジョン・ブリザード買収が承認されたのであれば、ディズニーのEA買収が承認されない理由はない。

EAとディズニー両社上層部の限られた人々以外で、買収を喜ぶ人はいないのではないだろうか。長い目で見れば、どちらの会社にとっても、そして消費者にとっても良いことだとは思えない。買収計画が実際に前進するかどうか、今後の展開を見守りたい。

forbes.com 原文

翻訳・編集=遠藤宗生

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