経営・戦略

2023.10.16 14:15

新人IRがファンド役をやると投資「見送り」 模擬IR会で埋まる溝

現役IR担当者が得た発見

「普段、自分がIR側にいるときは、これからの成長ストーリーを相手に信じてもらって当然だと思っています。でも、いざファンドマネージャー側になってみると、これだけ過去の利益成長の実績がある会社でも、継続的な利益の成長を安々と信じることはできず『買い』判断を行えませんでした」

さらに付け加えたのはこんな言葉。

「ファンドマネージャー役になってみると、『未来』がすごく気になる。一方で自分自身のこれまでのIRでは『過去』の実績や『現在』の状況のことばかり説明していることに気付きました」

企業の価値とは、将来のフリーキャッシュフローの現在価値の総和、つまり「未来」ということは頭では分かっていたAさん。

「今回、投資判断をするにあたり、『未来』の重要性について腹落ちしました。これから実際の業務でIRを行う時は、もっと未来について話そうと思います」とAさんは締めくくりました。

これを聞いて喜んだのは、ゲスト講師を務めた、長期投資を行うベテランの現役ファンドマネージャーでした。「自分が長年経営者やIR担当者に言い続けてきたことが、まだキャリア1年のAさんに心の底から理解してもらって感激した」とのこと。

Aさんは、ファンドマネージャー役になったことで他にも新たな発見があり、社長・CEOの人柄や組織の在り方、株式としての競合比較(事業の直接の競合でなくても)などに興味が沸いたと話していました。それらについても現役ファンドマネージャーはうんうんと頷いていました。

「相手の立場になってみる」のが難しいのなら、模擬的に体験する機会を作ってみるのが効果的です。ナラティブの溝を、容易に越えることができるでしょう。

文=市川祐子 編集=露原直人

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