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2023.10.11 09:00

安物ロケット弾と小型ドローンの合せ技 ハマス奇襲「成功」の裏側

ロシア軍は航続距離40km超、弾頭重量約5kgのランセットを使って、ウクライナ軍の防空や大砲、レーダーに対して一定の成功を収めている。ザワリの誘導システムがどうなっているのかは不明だが、おそらく固定目標のGPS座標をあらかじめ入力するのだろう。今回の攻撃の目標は、反撃を阻むために兵舎や指揮所のような高価値の軍事施設に据えた可能性もあるし、単にできるだけ大きな被害や恐怖を引き起こすために民間施設を狙った可能性もある。

戦車攻撃用のドローンや爆弾も配備か

ハマスは民間人を殺害しただけではない。攻撃の映像には、イスラエル国防軍の車両が多数撃破されたり損傷したりした様子も映っており、それにはメルカバMk4主力戦車数両も含まれる。イスラエルで開発されたメルカバは、RPG対戦車擲弾や携帯式ミサイルといった武装勢力が使うようなタイプの武器、あるいはもっと高度な脅威を想定して設計されている。とくに、迫り来る対戦車兵器を撃ち落とす「トロフィー・アクティブ・プロテクション・システム」は世界最先端の装備と考えられている。

ハマス側が撮影したある動画では、マルチコプター型ドローンがメルカバに弾薬を投下している。この弾薬は警備塔に対する攻撃で使われたものより一回り大きいようだ。ドローンセックは、ハマスのアルナセル・サラー・アルディーン旅団が、ウクライナ軍で運用されている重無人爆撃機のような大型のヘクサコプター(回転翼6つ)型攻撃ドローンを誇示したことに注目している。爆薬はメルカバに命中し、爆発したように見える。爆発の影響の評価はできないが、数秒後、戦車の右前部で火災が発生したようだ。

初期段階の未確認情報だが、イスラエルはメルカバ6両と装甲兵員輸送車17両を失ったと報告されている。ハマス側は、鹵獲した戦車のうち少なくとも1両はドローンで行動不能にさせたと主張しているが、それが動画に映っているものなのかははっきりしない。

奇襲攻撃後、守勢に回ったハマス側は、圧倒的に強力なイスラエル国防軍の攻撃によって甚大な損害を被る可能性が高い。ハマス側はおそらくロケット弾や自爆ドローンの在庫を使い果たしていて、長期にわたって作戦を続けていくのは無理だろう。だが、備えができていると言われていたイスラエル国防軍にハマスが大きな損害を与えうるという衝撃は、今後何年もの間、多くの疑問を生んでいくことになるに違いない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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