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2023.10.11 09:00

安物ロケット弾と小型ドローンの合せ技 ハマス奇襲「成功」の裏側

遠藤宗生

ドローンから爆弾投下で監視の目つぶす

ロケット弾による大規模な弾幕射撃は、地上での急襲の目くらましが主な目的だったのかもしれない。ガザはCCTVカメラの塔や人感センサーなど監視システムを備えた防護フェンスで囲まれており、何者かがイスラエル側に侵入しようとすれば警報が出される仕組みになっている。検問所のカメラは顔認識システムと連携しており、ガザとヨルダン川西岸地区は、世界でもっと厳重なデジタル監視下に置かれている場所と言われる。

ハマス側は主だった監視システムの位置を事前に特定し、襲撃の開始にあたってそれらをつぶすための兵器を用意していたもようだ。監視システムが破壊されると、イスラエル側はどこで何が起きているのかを正確に把握できなくなる。

ドローンの脅威へのソリューションを手がけるオーストラリア企業ドローンセック(Dronesec)は、ハマスのマルチコプター(複数回転翼)型ドローンがイスラエルの警備塔や検問所、通信塔に爆発物を投下する様子を捉えた映像を集めている。こうした映像の数からも、これが周到な連携作戦だったことがうかがえる。この作戦によって、ハマスの数百人規模の戦闘員は、作戦の次の段階である障壁の爆破や突破を監視の目を気にせず実行できた。センサーを失ったイスラエル側は、どこで主攻撃が行われているかつかめず、効果的な対応が取れなかったと考えられる。

自爆ドローン数十機も投入

ハマスによれば、自爆ドローン「ザワリ」35機もイスラエル側の攻撃目標に向けて発射したという。

ザワリ(またはズアリ)は、ロシアの自爆ドローン「ランセット」と同じくらいの大きさの携帯可能な固定翼ドローンで、名前は2016年に暗殺されたチュニジアのドローン専門家モハメド・ザワリに由来する。もともとは偵察用だったらしいが、現在は攻撃用に改造されている。

ハマスは2021年、開発した小型攻撃ドローン「シェハブ」について、アイアンドームの迎撃ミサイルを回避できると主張していた。地面近くを飛行できるドローンは、高いアーチ状の弾道軌道を描くロケット弾よりもはるかに見つけにくい。

映像によれば、ザワリも複数機が同時に発射されたとみられ、これもおそらく、イスラエル側の防空能力を圧倒して一部が突破する可能性を高める狙いだったのだろう。この新型ドローンは、最も成功した飛行パターンなど、過去のドローンでアイアンドームを試して得られたほかの教訓も取り入れているかもしれない。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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