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2023.10.11

安物ロケット弾と小型ドローンの合せ技 ハマス奇襲「成功」の裏側

ハマスの軍事部門「カッサム旅団」によって撃破されたイスラエル軍の戦車。パレスチナ・ガザ地区のイスラエル境界近くで(2023年10月7日撮影、Abed Rahim Khatib/Anadolu Agency via Getty Images)

パレスチナのガザ地区を支配するイスラム組織ハマスが7日、イスラエルに対して過去最大規模の攻撃を仕掛けた。ハマス戦闘員はイスラエル側が境界に設けた防御を突破し、民間人数百人を殺害、多数を人質に取った。この急襲はイスラエル側にとって不意打ちで、旧日本軍による真珠湾攻撃にもなぞらえられている。ハマス側は小型のドローン(無人機)によってイスラエル国防軍の戦車も撃破。小規模で資金力も乏しいハマス軍事部門は、どのようにして世界有数の先進的な軍隊に奇襲をかけたのだろうか。

ロケット数千発でアイアンドーム破る?

ハマス側が攻撃で主に用いてきたのは、「カッサム」と呼ばれるロケット弾である。これは工業用のパイプに、自家製のロケット燃料と市販の爆薬を詰め込んだ安上がりな兵器だ。ロケット燃料は砂糖と硝酸カリウム肥料をこね合わせて作る。要は粗製の兵器であり、それ自体は効果も高くないのだが、戦闘員2人が発射レールで装填して撃ったあと、イスラエル側に狙われる前に姿を消せるほどにはコンパクトなものである。

カッサムはロシア製の122mmM-21グラート多連装ロケット砲など、より大型の軍用ロケット砲で補完される。これらのロケット砲で使われるロケット弾はカッサムよりもサイズが大きいだけでなく、精度も高く破壊力も格段に上だ。半面、はるかに位置を特定されやすくなり、破壊もされやすい。

カッサムによる攻撃は基本的に擾乱射撃(休息の妨害や移動の阻止、士気の低下などを狙った射撃)だと言える。とりたてて目標を定めず撃ち込むから損害をもたらす可能性は低いものの、致命的になる場合もある。そこで、イスラエルがカッサムなどの攻撃を防ぐために設けたのが、有名な防空システム「アイアンドーム」である。レーダーと迎撃ミサイルで構成されるアイアンドームは、飛来してくる数百発のロケット弾を追跡・撃墜でき、2021年の紛争では4500発のロケット弾を90%という高い成功率で撃ち落としたと言われる。

とはいえ、アイアンドームのような先進的な装備にも限界はあり、ハマス側はこれが対処しきれないほど大量のロケット弾を撃ち込んで飽和させようとした。一部の報道によればハマス側は今回、20分で5000発ものロケット弾を浴びせたといい、その結果、多くがアイアンドーム突き抜けた可能性がある。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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