カミナシについても同様に筆頭株主になれました。そんなSaaSも、今では 「コンセンサスとは異なる、正しい選択」から「コンセンサスとなっている、正しい選択」へと市場の認識が変わっています。Coralはこのセクターに対して引き続き明るい見通しを持っていますが、こうした認識のシフトが起きた時点で以前より相場形成が効率化されるため、突き抜けたリターンを得る余地は減ったと考えられるでしょう。
京都フュージョニアリングへの投資についても同様です。「核融合はいつまでたっても30年先だ」という長年のジョークとともに懐疑的な見方が広まり、業界の展望に影を落とす中、Coralは逆張りのスタンスで同社のシードラウンドに投資しました。それが今では、同社が直近の資金調達ラウンドで105億円の調達に成功したことからわかるように、有望カテゴリーの1つとして市場に認識されています。
SmartHRや京都フュージョニアリングの成功談は、「コンセンサスと異なる、正しい選択を取ることに投資のスイートスポットがある」というマークスの哲学の中核をなす信条をまさに立証しています。
しかしこの戦略を実践するのは簡単ではなく、市場がアセットの価値を見誤っている稀なタイミングを見極めるスキルが必要とされます。ベンチャーキャピタルが「サイエンス」より「アート」に近いのではないかと言われる所以です。
だからこそ、私も自分の足元を見失ってしまったと感じるときはマークスのような業界の先輩の教えに立ち戻り、時代を超越した投資の原則を振り返るようにしています。
連載:VCのインサイト
過去記事はこちら>>