アフリカの貧困問題の解決に取り組むため、2018年にガーナでDegas(デガス)を起業した。近年、アフリカでは急激に発展する都市が目立つ一方で、未だ人口の7割ほどが農村に住み、そのほとんどが貧困に喘ぐ小規模農家という現実がある。
Degasは、そうした小規模農家の生活を根本から変えるために農業資材の融資と営農指導を行い、生産性と所得を向上してきた。農家には収穫物で返済してもらい、それを大手食品メーカーなどに販売することによって、収益を得ている。
現在はガーナを中心に事業を展開し、2023年度の融資先の農家数は2.6万軒にのぼる。1軒1軒の農家や農地のデータを取得して戦略を立てるなど、テクノロジーを駆使した形式的かつ定量的なオペレーションで、融資先のさらなる拡大を図っている。
原点はインドのスラム街
牧浦は、幼少期から海外の教育に触れて育った。小学校時代は、学習院初等科に通いつつ、夏休みにはイギリスなどのサマースクールに参加していた。その中で、校則の厳しい日本の学校とは違う自由な校風に惹かれ、海外の学校に興味を持つようになった。中学生2年次に親からイギリス留学への興味を聞かれたことがきっかけで、ひとり渡英。もとは1年程度の予定だったがそのままイギリスで過ごし、高校へ進学した。
現在の活動の原点となったのが、高校での外部活動だ。イギリスの高校では2カ月ある夏休みの間に外部活動があり、これが大学入試でも重視される。海の家で働くプログラムや、チャリティ団体で働くプログラムなどがあるなかで、牧浦は「インドのスラム街で英語を教える」というプログラムを選んだ。地理の授業でなんとなく興味を持っていた、という動機だったが、これが大きな学びにつながる。
インドのスラム街にある学校では、13歳から18歳までが同じクラスで、3人で1冊の教科書を覗き込みながら学ぶような状況だった。しかも、子どもたちは午前中に仕事をした後、学校に通っていた。牧浦はそんな子どもたちの意欲的な学習姿勢を見て、矛盾を感じたという。
「当時私は学費が何百倍もかかるイギリスの学校に通っていましたが、友人たちはダルいから授業に行きたくないと言い、雪で閉校になれば喜んでいた。つまり、存分に勉強ができる環境を“幸せ”とは感じていなかったんです。経済的な豊かさは、必ずしも幸福度とは比例しないんだと気が付きました」
その後、大学進学前に進学を1年間後ろ倒しにするギャップイヤーを取得し、知人の紹介で途上国の教育格差解消を目指すNPO「e-Education Project」に参加。ルワンダ支部の代表として教育プロジェクトを推進した。
イギリスで大学に進学してからも、頻繁にルワンダに足を運んだ。そして、途上国の問題に本腰を入れて取り組むために大学を中退。その後数年にわたって、当時急速に発展していた東南アジアでの事業展開を行った。