「知らない」「まだ対応できていない」──開始直後の「リアル」
「インボイス? 知らんなあ」、「ごめん、まだ対応できていないわ」。
──ある地方出張で駅前に並ぶタクシーに乗車する際に、インボイス制度に対応しているか? と質問した時のタクシー運転手さんの反応です。
とりわけ、3台目のタクシーに、乗車する前に質問した時の反応には驚きました。質問したあと、外から扉を開けてもらうようジェスチャーしたら、なんと両人差し指をクロスさせ、「ペケ」のジェスチャー。そう、乗車拒否されたのです。なんか面倒くさい客が来たと思われたのでしょうが、さすがに乗車拒否されるとは思いませんでした。
また、あるレンタカー会社では、「インボイス? ちょっと確認してきていいですか?」という反応でした。そして、確認してきた後、「まだ対応できていませんので、後日郵送します」という回答でした。まあ、ある程度予想はしていたので特段驚きはしませんでしたが、これが現場の実態です。
さて、10月1日からいよいよ始まったインボイス。現場はこのような状況なのですが、皆さんの認識はどうでしょうか? 恐らく、「インボイス」という言葉は知っているけど、よくわからない、若しくは、自分には関係ないと思っているのではないでしょうか?
でも、関係ないと思っている人は要注意です。会社勤めのサラリーマンの方は大いに関係があるのです。
インボイス制度で「何が変わった」?
「インボイス」とは正式には「適格請求書等」といい、インボイスを発行する事業者のことを、「適格請求書等発行事業者」と言います。本稿では、わかりやすく「インボイス」と表現しています。
では、インボイス制度導入により10月1日から何が変わったのでしょうか?
インボイス制度とは消費税の仕組みに関することを言います。私もよく、「インボイスが始まったら、『経費』として処理できなくなるのでは?」といった質問をクライアントの社長から受けていました。しかし、インボイスとは消費税の仕組みに関することなので、「経費」が関係する「法人税」や「所得税」に関する制度ではありません。なので、インボイスでない領収書を入手したとしても、その領収書が法人税や所得税上において、「経費」として処理できないということはありません。
それでは、消費税はどのように納税を行うのでしょうか? 改めて、簡単に仕組みを説明します。
消費税は、以下の図のように、売上に対して預かった消費税から仕入や経費の支払いに際して負担した消費税を差し引いて差額を納税することになります。この差し引いた消費税のことを「仕入税額控除対象消費税額」と言います。
今までは、受け取った領収書等であればどのような様式であれ「仕入税額控除」として控除できていたものが、10月1日からは、『インボイスのチェックポイント』で記載している記載要件を満たしていなければ、「仕入税額控除」として差し引くことができなくなるのです。差し引くことができないという事は、その消費税額をそのまま多く納税しなければならないということになります。