肥満・糖尿病・心臓病を結び付ける新疾患、米心臓協会が提唱

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米国心臓協会(AHA)は、心疾患が腎臓病、糖尿病、肥満などの他の疾患と関連した状態を指す新たな疾患を提唱した。30歳以上を対象にした検査のガイドラインも策定している。

米国心臓協会は9日に公表した論文で、この疾患を「cardiovascular-kidney-metabolic syndrome=心血管・腎・代謝(CKM)症候群」と名付け、心血管疾患、腎疾患、2型糖尿病、および肥満が関連したものと定義した。

腎臓病と心臓病に加え、糖尿病や肥満などの代謝異常を併発している状態が、CKM症候群となる。ただ、このうちの1つだけ当てはまる人でも、同症候群を発症するリスクがある。

CKMと命名した理由は、これらの疾患により心不全や腎不全のリスクが高まることにある。糖尿病患者は、心不全のリスクが2倍以上になる。また、心不全のうち、肥満が原因のものは女性で14%、男性で11%を占めると推定される。

米国心臓協会は、30歳になった段階で心血管疾患と心不全の検査を行い、今後10年間と30年間の心疾患リスクを調べることを推奨。一部の患者に対しては、オゼンピックやマンジャロ(チルゼパチド)など、病状を改善することが知られている薬の服用も勧めている。

CKM症候群は、次の5つのステージに分類される。

・ステージ0:CKMリスク因子がない状態。CKM症候群を予防し、健康を維持することが目標となる。BMIを健康的な値に保ち、良い生活習慣を心がけ、血圧、トリグリセリド、コレステロール、血糖値などの検査を受けることが推奨される。

・ステージ1:過体重、肥満、あるいは腹部肥満があるが、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)など、それ以外の代謝リスク因子はない。生活習慣の改善、5%以上の体重減、2~3年毎の検査が重要となる。

・ステージ2:代謝に関わるリスク因子、高血圧症、あるいは心血管疾患がある。例えば、2型糖尿病や腎疾患のある人が該当する。腎疾患や心疾患が悪化するリスクが高いため、治療の目標は、リスク因子に対処し、体重と糖尿病を管理する薬の処方などを通じて病状の進行を防ぐことになる。検査は毎年受ける必要がある。

・ステージ3:代謝リスク因子あるいは腎疾患に加え、心血管疾患の初期徴候、あるいは心血管疾患のリスクが高い。症候性心血管疾患および腎疾患の進行を防ぐため、薬剤を変更・増加するなどして対処する。一部の成人には、冠動脈カルシウムスコアの測定が推奨される。

・ステージ4:心不全や心臓発作などの心血管疾患の病歴がある。腎疾患がある場合とない場合で、2つの区分に分けられる。個人の病状に合わせてCKMmの諸症状を治療することが目標となる。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫・編集=遠藤宗生

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