「エネルギーに関して最悪のシナリオである、正面衝突になりかねないコースだった」とハーバード・スミソニアン宇宙物理学センターの天文学者で、軌道周回物体監視の専門家であるジョナサン・マクダウェルは、X(旧Twitter)にポストした。
軌道モニタリングとデータ構築を手がける企業LeoLabs(レオラブス)は、ソビエト連邦時代のロシアの廃衛星と、中国の使用済みロケット機体が、9月13日にニアミスを起こしたと発表した。
「危機一髪の瞬間はこれまでにもあったが、今回のニアミスは特筆に値する」と、同社はXのポストで述べた。「2つのデブリが衝突した場合、生じる破片の数は約3000個に達しただろう」
⚠️ On Sept 13, a derelict Soviet-era payload had a conjunction with a Chinese rocket body.
— LeoLabs (@LeoLabs_Space) September 18, 2023
The miss distance was 36 m (± 13 m) and the probability of collision was 1E-3 (i.e., 0.1% or 1/1,000).
While we've seen more nail biting events, this one is notable — here's why. pic.twitter.com/f32vt8uucl
これは、2021年11月にロシアが行なった、ミサイルによる衛星破壊(ASAT)のデモンストレーションによって生じた破片数の約2倍に相当する。当時ロシアの行動は国際社会から一様に批判を浴び、低周回軌道の歴史上最も重大かつ破壊的な事象の1つとされた。
今回のニアミスに関与したロシアの衛星「コスモス807」は、1976年に打ち上げられたもので、搭載物重量は400kg。レオラブスによれば、この衛星は近年、稼働中の衛星やスペースデブリ(ロシアのASATテストで生じた少なくとも6つの破片を含む)との衝突が懸念される低軌道で地球を周回している。
一方、重量2トンの中国の使用済みロケット、長征4号(CZ-4C)も、過去5年にわたって同様の状態にあり、レオラブスが「高衝突確率」と定義する接近事象に140回以上も名を連ねている。
「今回の事象は、古い廃棄物と新しい廃棄物の遭遇という近年のトレンドを象徴するものだ」と、レオラブスは述べる。「大型デブリ同士の衝突がいずれ起こることは不可避であり、これにより数千の破片が発生し、現在我々が利用している衛星に影響を及ぼすことへの懸念が、改めて浮き彫りになった」