洪水危険地域への居住地拡大、世界各地で進行

オーストラリア・ブリスベンで2011年、洪水に見舞われた住宅地(Shutterstock)

世界中で、洪水が発生しやすい地域への居住地の拡大が急速に進んでおり、そのペースは市町村の平均的な開発スピードを上回っていることが、今月4日に英科学誌ネイチャーに発表された研究論文で明らかになった。気候変動により洪水のリスクが高まっているにもかかわらず、危険な地域に住む人々が増えつつあり、人的・経済的な災害の恐れが大きくなっている。

影響が最も出ているのは東アジア・太平洋地域で、大規模な洪水のリスクにさらされている居住地の割合は、1985年から2015年の間に7.8%から9.5%に増加した。

世界全体で見ると、「100年に1度の洪水」(任意の年に100分の1の確率で発生する洪水)に見舞われた場合に水深1.5m以上の浸水被害を被る恐れがある居住地は5.2%にとどまる。だが、この数字も1985年の4.3%から増加している。

全体として居住地の洪水リスクが特に高い国の多くでは、数十年前にも洪水多発地域に住居を構える傾向が強かった。

2015年の調査で最も洪水リスクの高かった低・中所得国8カ国のうち、ラオスとバングラデシュでは洪水被害に極めて遭いやすい居住地の割合が20%を超え、ベトナムでは30%を超えている。中国も、大洪水に見舞われる恐れの高い居住地が1985年の8.1%から2015年には9.8%に増加し、報告された中で7番目にリスクの高い国となっている。

水辺には高級住宅地がつくられる場合もあるが、低・中所得国では、急速な都市化と土地不足の表れである事例がほとんどだ。研究チームは、土地が不足したときに洪水多発地域が居住地と化す理由として、開発の遅れた地域における都市計画と災害意識の欠如を挙げた。急成長する都市に経済的な機会を求める人々が集まることで一極集中圧力が生じ、こうした影響をもたらしている。

カギを握るのは「減災」

この研究によると、1985年から2015年の間に、洪水リスクの高い居住地は世界全体で122%増加した。一方、世界の居住地面積の拡大率は平均85.4%だった。洪水多発地域への居住地拡大は先進国でもみられるが、通常はダムや防潮堤などを整備して洪水リスクの軽減を図っている。

研究では、世界で最も深刻な洪水リスクにさらされている国は、厳密な解釈に基づけば、国土の大部分が海抜0m以下の土地に築かれているオランダだとしている。しかしオランダは優れた治水対策で知られており、災害を引き起こす要因となっているのは洪水リスクそのものではなく、低所得国における対策不足との組み合わせだということが改めて浮き彫りになった。

洪水リスクが増大している高所得国・地域には他に、日本、香港、スイス、オーストリア、クロアチア、スロベニア、韓国など。

欧州は、治水対策が整っている場所が大半とはいえ、アジアに次いで最も洪水リスクの高い地域となっている。中所得国に分類されるバルカン諸国のボスニア・ヘルツェゴビナやモンテネグロは、居住地の洪水リスクが世界最高水準の国に含まれている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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