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2023.10.08 08:00

イーロン・マスク評伝から見えた「X」を待ち受ける破壊的運命

イーロン・マスク(Shutterstock)

イーロン・マスクとはいったい何者なのか? 最近出版された彼の評伝が、この問いかけに詳しく答えてくれている。ウォルター・アイザックソンが執筆した『イーロン・マスク』は、マスクの知られざる側面を明かす、読み応えのある作品といえる。

これから読む人のために詳細は紹介しないが、特に彼の家族との関係性や、世界一の富豪になる前の人生について書かれている序章は読み応えがある。通常、主人公が若い頃の家庭生活について長々と書いた伝記は飽きてしまいがちだが、本書ではマスクの人格がどのように形成されていったかをうかがい知ることができ、非常に興味深い。

本書は、彼の内面を驚くほど詳細に書いており、マスクを突き動かしている動機を垣間見れる。友人や家族、そしてマスク自身の言葉が随所で引用されており、書かれている内容に信憑性を持たせている。読者の注意を引くのは、地球上で最も有名な起業家の心理だ。マスクが天才であることはいうまでもないが、本書を読むと、彼がいかに行き当たりばったりであるかということがわかる。

本書は、スペースXの歴史と、同社がロケットの打ち上げテストを開始した経緯を紹介している。同社は当初、カリフォルニアにある発射台を使用していたが、マスクは政府による打ち上げが終わるのを待つのが嫌で、突如としてロケットをハワイ、ホノルルの南西3900キロのクェゼリン環礁に輸送した。しかし、遠隔地であることなどが理由で、その試みは失敗に終わった。

このエピソードを読んだとき、筆者は少しの間、読むのを止めて考えた。マスクはスペースXという巨大な企業を立ち上げながら、アイザックソンがいうところの「せっかちさ」から、突如として地球の裏側でロケットを打ち上げることにしたのだ。当時、周囲の誰もがその決断に疑問を投げかけた。

これは、現在のマスクにも通じる話だ。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、マスクはX(旧ツイッター)の経営方針についても性急な意思決定を行った。多くの社員を解雇し、ブランドの名称を変更し、次はユーザーに月額使用料を課すことを検討している。アイザックソンが描くマスクは、信じられないほど行き当たりばったりで、それが周囲を困惑させている。

しかし、マスクはスペースXの最初の打ち上げを成功させ、本書の後半でさらに偉大な出来事が起こることを示唆している。筆者はまだ読み終えていないが、マスクが後にテスラを成功に導いたことは、周知の事実だ。
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編集=上田裕資

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