北米

2023.10.06 09:15

バイデン政権、「国境の壁」建設再開へ トランプは謝罪要求

メキシコ・フアレスで、米国への亡命を申請するため国境沿いの壁に集まる人々(David Peinado Romero / Shutterstock.com)

米国のジョー・バイデン政権は5日、ドナルド・トランプ前大統領の目玉政策だった国境の壁建設を再開すると発表した。バイデンは以前から壁建設を批判しており、再開は方針転換となる。トランプはこれを受け、バイデンに謝罪を要求した。

米国土安全保障省の告示によると、バイデン政権は2019年度の予算で壁建設に充てられた資金を使い、テキサス州スター郡の対メキシコ国境に「物理的な障壁」を建設する。また、建設を早急に進めるため、環境や絶滅危惧種の保護などを定めた連邦法26件の適用を免除する。

同省のアレハンドロ・マヨルカス長官は、不法入国を防止するために障壁を建設する「急務かつ緊急の必要性」があると指摘。また、同省には2019年度の予算を「計上された目的のために」使用する義務があると説明した。

バイデンは2020年の大統領選挙に出馬した際、米公共ラジオ(NPR)に対し「私の政権では1フィートの壁も建設しない」と宣言。翌年の就任時には「南部国境全体に巨大な壁を建設することは、真剣な政策としての解決策にはならない」として、建設中止を宣言していた。

バイデンは5日、国境の壁には効果がないとの考えには変わりはないが、建設の予算がすでに計上されているため、国土安全保障省はその資金を建設再開に使うほかなかったと弁明した。

トランプは、自身が立ち上げたSNS「Truth Social」への投稿で「私が正しかったことを証明するために、あらゆる環境法に違反した」として、バイデンを批判。「バイデンは(国境の壁建設に)これほど時間がかかったことを、私と米国に謝罪するのだろうか」と疑問を呈した。

国土安全保障省の告示では、新たに建設される壁の長さは明示されていない。同省の税関・国境取締局が6月に発表した同プロジェクトの地図には、鋼鉄製の柱を連ねた壁を20マイル(約32km)にわたり建設する計画が記されていた。トランプ政権は450マイル(約720km)の壁を建設したが、トランプは5日の投稿で、この数字は誤りであり、正しい距離は560マイル(約900km)だと主張した。

バイデン政権はこのところ、国境管理をめぐり野党・共和党から強い批判を浴びている。一部の共和党議員は、壁の建設再開を要求していた。

米メキシコ国境では最近、不法入国が急増。税関・国境取締局は8月、昨年12月以来最多となる23万2000人余りを拘束した。この背景には、新型コロナウイルスの流行時に導入された国境管理措置「タイトル42」が5月に終了したことがある。同措置では、不法入国した移民の亡命申請を認めず、そのまま強制送還することが認められていた。

forbes.com 原文

翻訳・編集=遠藤宗生

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