そういった目覚ましい活躍をする地方公務員に光を当てるイベント、「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード」。2017年から毎年開催され、今年で7回目となるが、これまで累計81名の地方公務員が選出されている。
今回は過去最大の推薦が集まり、全国で12名の地方公務員が受賞した。協賛団体には、KDDI、ヤフー、NECソリューションイノベータ、PR TIMES、後援団体にJリーグなどが参画、地方公務員への注目や期待が民間からも高まっている。
受賞した12名の受賞者に共通しているのは、常に新たな価値を提供しようというチャレンジ精神。そして旧態依然とした組織風土の中にあっても、前例を打破する実現力だ。
今年の受賞者をあえて大別すると、次のような3つに分類できる。(1)世界に羽ばたくような「地方公務員のスケールを超える者」、(2)「地域の関係者と合意形成を図り、成果をあげる者」、(3)役所の業務の本質を捉え「大きな改善・改革を進めた者」である。12名の受賞者を紹介しよう。
スケールの大きさがすごい地方公務員
まず、(1)の地方公務員とは思えないスケールで仕事をする4人を紹介する。1人目は、群馬県みなかみ町の阿部真行だ。2013年に台湾に出向し、台湾からみなかみ町への観光客をわずか5年で10倍にした(2012年1393人泊→2017年1万654人泊)。情熱と人柄で現地の信頼を得て「台南市政府対日事務相談顧問」にも就任。
2019年には台南市の予算で『日本人公務員の駐在日記 台湾・台南そして安平』という書籍出版にまで至った。またみなかみ町の100倍の人口を抱える台南市との友好協定の締結につなげ、台湾政府のデジタル担当大臣オードリー・タン氏も、この2つのまちの交流を歓迎するコメントを残している。
静岡県の公務員である市川美奈子も、現在、台湾に駐在している。市川は「FOOD TAIPEI 2023」にブースを出展、静岡県内18社41商品のPRを行った。「HSK11級」の資格を取得しており(中国政府公認の中国語検定で当時最高級)、3億人以上の会員数を誇る中国の旅行会社(Ctrip)と直接交渉している。他にも、国内事業では人気アニメ「ゆるキャン△」事業の担当者として4億円超の経済効果を生み出す。
教育の現場にもスケールの大きな受賞者がいる。福井県の坂井市立三国中学校教諭の江澤隆輔は、「もっといい英語の授業をしたい」「生徒がワクワクする、そして力のつく英語授業をしたい」と一念発起し、教職員が本気で英語の授業法を学ぶ「英語教員がちサロン」を運営、現在、約1000人の教師が参加し、切磋琢磨する。書籍も多数出版し、多忙な教師の時短術や、教師の本音についても広く発信することで、教育の価値を再考するきっかけを生み出している。
4人目に紹介するのは、岩手県八幡平市の中軽米真人(なかかるまい・まこと)だ。参加費無料の短期集中型のプログラミング合宿を立ち上げ、7年間で25回開催。4000人以上のエントリーを集めたが、なんと、18カ国から参加希望者が現れた。合宿後に移住する者も30人を超え、既に13法人が市内で起業、外部からの投資資金で3億円を集めている。