キャリア

2024.01.07 10:00

「儲からない農業」を一刀両断。元消防士発 ロックでクールな農業法人

石井節子
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勇気あるチャレンジが農業の未来を明るく照らす


設立から3年経った今、消防士から農家へ転身した頃の心境を思い出すと、やはり勇気も必要だったという。

「消防士、つまり公務員という安定を捨ててまで、農業というどちらかというと不安定な世界に飛び込むわけですから、家族を守っていかなければならないという不安もありました。けれど安定を捨てて不安定要素にチャレンジしていくということは、大きなやりがいにもなっています」

新しい世界へ果敢に飛び込む強さは、消防士時代に培われたメンタリティなのかもしれない。農業は古くからの伝統や習慣も残る世界。農業に新しい風を吹き込むことは、楽ではない道のりのはず。ところが村田さんの表情から迷いは感じられない。

「農業という狭いコミュニティの中で何かを変えていくことは、周りの反応を気にしていたらできないですから。ですが『こういう人も今後の農業には必要になってくる』と思ってくださる人もいます。私はそう思ってくれる人たちを大事にしたいです」

ロックファーム京都では農産物の生産や加工のほか、農業経営コンサルティングや就労支援、イベントの企画・運営なども手がけているのが斬新だ。村田さんたちスタッフが袴姿で出店したこともあった。

「袴姿で出店したのは、今までそんなことをした農家はいなかったと思うからです。裏では過酷な農業をしていても、面白くPRしていくことで通じるものがあると思っています」

村田さんはロックファーム京都の代表としての責任感のみならず、農業の未来のことも強く意識している。

「私自身もどんどん歳を取りますからね。次世代に引き継いでいってもらわないと、農業が盛り上がっていきません。昔の技術や伝統も大切にしていく必要はありますが、今の若い人たちの感性を農業にもどんどん取り入れて、新しいイノベーションを起こしていかないと何も変わっていかないと思っています」

誰かに強いられたわけではない。「やりたいからやっている」という村田さんの覚悟が、農業の未来を明るく照らす。

「仕事を仕事だと思っていないところがありまして、子どもの頃から好きだったことの延長がずっと続いているような感じもします」と語るように、村田さんが抱く農業への愛は深いのだ。

ロックファーム京都では、「京都舞コーン」のほか「あざといちご」や黒枝豆「麻ろ美」などこだわりの農作物を生産している。農業への愛とチャレンジ精神が込められた野菜や果物を是非味わってみてほしい。

ロックファーム京都

文=鈴木舞

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