政治

2023.10.05 13:30

ロシアが旧帝国版図に敷いた地政学的「地雷原」 中央アジアからセルビアまで

Shutterstock.com

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ナゴルノカラバフ紛争が大きく報じられ、セルビア周辺では対立が再燃している。今こそ、ロシアが帝国主義的な目的のために何十年、何百年にもわたって国内と周辺諸国にどのような断層を作り出してきたかを考察すべき時だ。

もちろん、こうした行いはあらゆる帝国がやってきたことだが、ロシアは「最後の帝国」であり、静かに消えゆくことはない。

ほとんどの人は、地政戦略学的な地雷原が仕かけられた場所を忘れているか知らないため、地雷原で爆発が起こると、文明が遅れた辺境の地で古来からくすぶる憎悪の火種が自然発火したように見える。実際は、こうした地域の多くはモスクワの体制によって非常に意図的に、不安定で辺鄙(へんぴ)で未開の状態に保たれていた。そして、ロシア人の平和維持部隊が介入すると、世界は喜んでそれを受け入れた。

アルメニアとアゼルバイジャンの対立の源であるナゴルノカラバフの領有権をめぐる果てしない論争に立ち入らずとも、ロシアが1813年以来この一帯を支配し、絶えず緊張をあおってきたことは知っておくべきだ。帝政ロシアが終焉を迎え、ソビエト連邦が成立する過程で、事態は悪化した。1990年代にソ連が崩壊すると、ロシア軍は積極的にカフカス地方の内戦を扇動し、参加した。

近隣のジョージア(当時はグルジア)では、ロシアが民族分離主義を国境地帯に組み込んだ結果、独立の兆しが少しでもあれば断層に沿って紛争の火が吹き上がりやすい状況が生まれた。北部の自治区だったアブハジアと南オセチアは急激にグルジアへの憎しみをつのらせ、分離独立を求め、ロシアに支援を要請した。ソ連崩壊後のロシアが弱体化し無力だと思われていた90年代初頭にである。

2008年、ロシア軍が南オセチア人の保護を掲げてグルジアに侵攻。グルジア人集落への暴力的な攻撃を扇動し、対立をあおった。何世紀にもわたるモスクワ体制による圧政よりも、グルジアの統治が嫌われたのはなぜか。悲しいかな、それが分断統治というものである。

一方、チェチェン人は2度蜂起し、共和国首都グロズヌイだけで10万人が犠牲になる大虐殺を経て、ロシアの傀儡であるイスラム原理主義者ラムザン・カディロフに支配されることとなった。カディロフは今、チェチェン人民兵を率いてウクライナでロシアに助力している。チェチェン人は、自分たちの親族を大勢殺した国のために、今まさに独立を守らんと戦っている国と戦争をしているのだ。そしてロシアは、ウクライナ軍と戦うために占領地からウクライナ人を徴発動員している
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翻訳・編集=荻原藤緒

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