2023.10.15

時代を読む、ストーリーのあるホテル No.32「庭のホテル東京」

静かな趣のホテル外観。一歩足を踏み入れるとそこは別世界、水道橋から徒歩4分とは思えない閑静な環境にスタイリッシュな内装のブティックホテルの世界が広がる。

東京には数多のホテルがあり、利用者も自分のお気に入りのホテルを探すのに一苦労かもしれない。そんな中、ここにご紹介するホテルは、ホテルの集中する銀座や新宿、池袋、渋谷など、いわゆる誰もが知る繁華街に位置するのではなく、また、後楽園遊園地や東京ドームのある賑やかな水道橋駅近にも近いものの、ホテル周辺はひっそりとし、粋で鯔背な小規模ホテル「庭のホテル 東京」が際立つ存在である。見逃せないこの‘メイド・イン・トーキョー’の江戸っ子ホテルは、海外からの個人客も含め、滞在した人の多くがリピーターとなる魅力溢れるホテルなのだ。

東京のホテルらしさが満載の隠れ家ホテル
ビジネスにも休暇にも快適なサイズ感


ロビーの巨大なライティングは和紙が貼られ行燈を模した照明器具。室町時代からあり江戸時代になると代表的な照明具として足元を照らしたという行燈。

ロビーの巨大なライティングは和紙が貼られ行燈を模した照明器具。室町時代からあり江戸時代になると代表的な照明具として足元を照らしたという行燈。


そもそも東京の魅力は高層ビルの集まる一画だけではない。まだまだ江戸の歴史を秘めた昔ながらの街角や、東京ならではの伝統文化を宿す場所も少なくないのだ。水道橋もそのひとつ、水道橋駅を挟んで東京ドームとは反対側にあり、静かな雰囲気を残すエリアだ。「庭のホテル 東京」は、この駅から徒歩4分ほどの立地にありながら、静かな通りに面しているため雑踏とも無縁なのである。

枯山水を思わせる庭園。ウッドデッキがあり和洋混合のモダンな空間はファンクションルーム「燦」に付随。

枯山水を思わせる「石庭(いしにわ)」。ウッドデッキがあり和洋混合のモダンな空間はファンクションルーム「燦」に付随。


ホテルには、神田三崎町で1935年創業の日本旅館から出発したという歴史が宿る。祖父母が開業したという旅館「森田館」からビジネスホテルの時代を経て、2009年5月にオープン、すでに14年の年月が流れた。オープン時は、オーナー兼総支配人であった「森田館」ファミリィの一人である女性をトップに、プライベート感溢れた地域密着型のホテルとして地域との文化活動に力を注ぎ、‘江戸’に強くこだわる様々なイベントも開催するなど、神田三崎町の伝統文化を残す発信基地のような貴重な場でもあった。近年、このホテルは運営が大手企業(野村不動産ホテルズ株式会社)に代わり、2022年3月に、開業以来の大規模工事を終えてリニューアルオープンを迎えた。

ルーフトップテラスの夜景。ホテル最上階のスペースは最近になりゲストにも開放。黒御影石の石舞台から緑を通して都会のパノラマを愉しめる。

ルーフトップテラスの夜景。ホテル最上階のスペースは最近になりゲストにも開放。黒御影石の石舞台から緑を通して都会のパノラマを愉しめる。


同時に、客室内でヨガ・瞑想・ピラティスなどを無料で体験出来るウェルネス動画プログラム「インルームリラクサイズ」の提供も始まり、15階のルーフトップテラスを含むホテルを象徴する4つの庭や、寛ぎのためのリラクゼーションスペースの増強など、宿泊のゲストにより豊富なアクティビティの提供をするための館内施設が拡充。一方で環境配慮への取り組み強化や、最新鋭の設備導入などニューノーマルも備えている。ただ江戸から東京に伝わる「美しいモダンな和」を掲げるコンセプトは変わらず、ますます個性を発揮するその姿勢から、広い東京でも唯一無二の存在感を維持している。

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文=せきねきょうこ

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