スポーツ

2023.10.06 08:30

NHLの八村塁となるか?「ミス2回で翌日クビ」の戦場で平野裕志朗が誓うこと

日々、目標と夢を言葉にする


「正直、最初の海外挑戦から3年は、失敗を恐れてはミスをして、そんな悪循環にはまっていました。自分よりレベルが高い選手たちが揃う場所では、小さくなっている自分に気づいたこともあります。

でも、少しずつですけど結果を残していく中で、それこそ俺が一番うまいんだ、と。ファンは、俺を見に来てるんだっていうメンタリティでやれるようになったんです。

誰にも負けないくらいの努力をすれば、結果を残せる。それが自分の自信に繋がる、極めてシンプルなことだと思います。なぜ努力できるか?それは誰よりもアイスホッケーが好きだからだと思うんです。

そして努力の仕方も重要です。ただコーチに言われたことを意識してやっていても成長はできません。

今、自分は何のために練習しているのか。自分には何が足りないのか、何を伸ばすべきなのか。そして自分の理想であり目標、夢は何なのか。やっぱり、夢をしっかり口に出すっていうことって大切なんです」

いい流れだ。ここで率直にぶつけてみよう。平野選手。あなたの夢はなんですか、と。

「僕は今、28歳。30歳までに必ずNHLに昇格しますよ」

「界隈が変わらないのであれば、僕は日本代表を辞退する」


今、日本のアイスホッケー界は岐路に立たされている。

簡単に説明すると、アイスホッケーの世界にはサッカーのJリーグや、バスケットボールにおけるBリーグのような国内リーグは存在しない。アジアリーグというものが存在し、日本、韓国、ロシアに拠点を持つ7チームが所属している(2022-23以降は日本、韓国の6チーム制に)。

しかし、9月開幕の23-24シーズンは5チームしかリーグに参戦できない。ひがし北海道クレインズという歴史あるチームが、所属選手への給与遅配などにより、来季のリーグ参戦が見送られたからだ。

そこで新たに、北海道ワイルズというチームが生まれ、クレインズに所属していたほとんどの選手を吸収した。

これで、当初通り7チームでのリーグ開催......となるように見えていたが、リーグへの加盟登録期日を過ぎているという理由から、この新チームのリーグ加盟は見送られてしまった(リーグ運営側と北海道ワイルズの間に確執も噂されている)。結果として、20人以上のプロのアイスホッケープレイヤーたちは、1シーズンの間、トップリーグでの公式試合ができなくなってしまった。

そこで平野は以下のような声明文を、各SNSに提示した。

「もっと選手のことを考えましょうよ、と。なんなら特例を作って、新規チームの参入を認めてもいいんじゃないですか。日本のアイスホッケー界のことを考えた時に、まず選手に出場の機会があることが第一なのではないでしょうか。

選手にとって1年間、プロリーグでプレーできないということは、それは衰退を意味します。リーグ戦に出場できなければ、日本代表への参加資格を失うというルールもあります。

だから僕はあのようなメッセージを発信させていただいたのです。僕はいちプレイヤーですが、日本のアイスホッケーの再興を本気で願っています。だから、日本代表のユニフォームを脱ぐ覚悟もあるのです」


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文=後藤 亮輔 写真=小田 駿一

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