「J2のクラブがACLに出るためには、天皇杯で優勝しなければいけない。なかなか実現しないことだと思いますし、だからこそ僕たちはJ2の代表として誇りを持って戦っています。J1を含めても限られたクラブが出場するなかで、甲府が1勝することとJ1のクラブが1勝することはやっぱり価値が変わってくると思っています」
J2という「ハンデ」
ACLを戦っていく上で、J2のクラブはさまざまなハンデを背負う。まずは戦力。J1の上位クラブと比べると全体的にどうしても劣る。さらに甲府の場合、今シーズンのキャプテンを務め、開幕からリーグ戦で全試合に先発出場していた左サイドバックの須貝英大が、7月に鹿島アントラーズへ移籍している。
過密日程という負担もある。年間42試合を戦うJ2リーグは、J1リーグより8試合も多い。上位2位までに入ったチームはJ1へ自動昇格するが、一方で3位から6位に入ればJ1昇格への最後の1枠をかけたプレーオフに出場し、日程的にACLグループリーグ後半戦と重複する。甲府は現在、プレーオフ出場権を争っている。
遠征費などを捻出するうえで、クラブの財力も問われてくる。Jリーグが毎年公表している直近のクラブ決算書を見ると、甲府の売上高15億6400万円は22クラブのなかで中位に甘んじ、J2平均の17億2800万円をも下回っている。
対照的に浦和、川崎、マリノスの売上高は順に81億2700万円、69億7900万円、64億8100万円でJ1の上位3位に名を連ねる。ACL出場クラブにはJリーグからACLサポート分配金1億円が支給されるが、それでも厳しい状況に変わりはない。
さらに甲府の場合、同チームの本拠地「JITリサイクルインク・スタジアム」がACLの開催要件を満たしていないため、ホーム戦の試合会場として使用できない難題にも直面した。クラブは最終的に東京・国立競技場の使用を申請して承認されている。
旧国立競技場でJリーグの試合を開催する場合、使用料として1000万円から1500万円が設定されていた。新国立競技場のそれは旧来の価格をはるかに上回っているとされるなかで、たとえ支出が増えても東京の中心でACLを戦う意義を、奇抜なアフロヘアをトレードマークにする甲府の35歳のベテラン、FW三平(みつひら)和司はこう語っていた。