手がけるのは、スモール・ジャイアンツ イノベーターの林篤志。「Local DAO」という新たな自治体の仕組みづくりに挑戦する山古志から、林はどのような未来を描くのか。
──2021年12月に「Nishikigoi NFT 」の販売を始めてから、仮想コミュニティとリアルの間でどのような相互作用が生まれていますか。
NFTホルダーの3割が実際に山古志を訪れるなど、リアルとデジタルの距離感は、発行から1年半経って確実に近づいてきています。
例えば、お祭りを一緒に作ったり、雪かきツアーと称してデジタル村民が高齢者の家の雪かきを手伝ったり。リアル村民とデジタル村民の交流が増えています。
その中で一番大きいのは、少子高齢化と人口減少により地域単体ではなかなかやりたいことができなかった山古志に、NFTを通じていきなり1000人以上のプロフェッショナルなスキルを持った人たちが仲間に加わり、できることが増えてきたということです。
Nishikigoi NFTは山古志の存続に直接的な影響を与えるものではないですが、重要な作用をもたらしていると思います。
そしてNishikigoi NFTは山古志側だけでなく、デジタル村民のライフスタイルにも影響を及ぼしています。デジタル山古志というアイデンティティを得たことによって日々の振る舞いや仕事の仕方が変わっていく。
印象的だったのは20代のメタバースクリエイターの話。「SNSでは自分の作品の反響があまりないと感じてきたけれど、山古志のコミュニティ内ではみんなが喜んでくれて評価してくれる。とてもやりがいがある」と。
社会の中で、自分がどこの範囲に貢献するか、どこに帰属するかをNFTを使って再定義することによって、自分のやるべきことがクリアになり、さらにインセンティブがもらえる。そうやって生活が良い方に変わっていくということが、デジタル村民一人一人の中で生まれています。
──運営側としてデジタル村民に求めることは何でしょうか。
デジタル村民は、NFTを買った瞬間から村民になれるんです。「山古志のデジタル村民になりました」とSNSに投稿するホルダーもいます。従来では、よそ者が突然、村の名前を語って「村民になりました」と言えるなんてことは、考えられないことでした。
ほとんどの方は、山古志のことを知らないし行ったこともないけれど、ジェネラティブアートの面白さやNFTとしての投機性に興味をもったり、NFT×限界集落という組み合わせに面白みを感じて入ってきた人たちです。
その中には、DAOの規約を作っているようなコアメンバー、コアではないけれどプロジェクトをチェックし意思決定の時には投票している人、ただ静観している人、様々な方がいます。こういった人たちがバランスよくコミュニティにいることが、コミュニティの価値を維持していると分析しています。