欧州

2023.09.29 09:00

ロシアが投入した70年前の野砲、ウクライナがドローンで破壊

遠藤宗生
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ウクライナ軍が、D-44を長期保管庫から引っ張り出した理由は明らかだ。侵攻当初、ロシア軍は榴弾砲とロケット弾発射機をウクライナ軍のほぼ3倍持っていた。ウクライナは後に、北大西洋条約機構(NATO)加盟国から1100門もの近代的な大砲を受け取り、砲兵部隊を刷新した。

だが、ロシア軍が着実に損失を出し、それまで大量に保有していた大砲が減り始め、1940年代に製造された野砲の一部を再活用せざるを得なくなるまでには、時間がかかった。戦争が3年目突入に近づく中、ロシア軍は1000門を超える榴弾砲とロケット弾発射機を失ったが、ウクライナ軍側の損失は500門以下だ。

ウクライナ軍砲兵部隊の高位将校であるアーティ・グリーンは、対砲兵戦はウクライナ軍に有利になりつつあると主張。米国製の155mm砲弾エクスカリバーなどレーザー・GPS誘導弾に言及し、「精密弾は、ロシア軍が対抗できないものだ」と説明した。

ウクライナ軍の西側製大砲は、ドローンからの合図に基づき、ロシア軍の大砲よりも遠くから、そして高精度で発射される。そのため、ロシア軍の砲手は、自分達に照準が合わせられていることに気づかない。アーティ・グリーンは「ほとんどの場合、精密兵器を使用した長距離射撃だ」「敵の砲兵を発見したら、最も適切な射撃兵器を選択して攻撃する」と語った。

同時に、ウクライナ軍の巡航ミサイルによるロシア軍の車列や兵站部への攻撃は、ロシア軍の砲台に時に砲弾が回らなくなるほど大量の砲弾を破壊しているという。ロシアの方が砲弾の製造能力が高いにもかかわらずだ。

ロシア軍の古い野砲D-44を1門破壊しても、対砲兵戦の優劣全体にはさほど影響しない。だがD-44の存在は、ウクライナ軍の砲撃による近代的大砲の損失が増えるロシア軍の必死さを如実に示している。ウクライナ軍は砲撃戦に徐々に勝ちつつある。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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