現在、海上に突き出して見えるのは、大きな山脈の一部(ニュージーランドの北島と南島)と、いくつかの孤立した山頂(小さな海洋島)のみである。この「失われた大陸」こそ失われた文明アトランティスの伝説の起源ではないかとの推測もあるが、ジーランディアは人類が地球上に出現するよりはるか昔に海中に姿を消してしまった。
地質学者にとって大陸とは、花崗岩などの火成岩でできた厚い大陸地殻を基盤とし、活発な地殻変動によって形成された変成岩や地表浸食による堆積物が組み合わさって形成された広大な地域を指す。ジーランディアはこれらすべての特徴を持つが、実際に訪れることは難しいため、地質の詳細はほとんどわかっていない。
ニュージーランド、ニューカレドニア、オーストラリア、米国、デンマーク、タスマニアの地質学者たちはこのほど、海底などから採取した岩石サンプルと地球物理学的マッピングを用いて、新しい地質図を作成した。
研究チームは、複数の島の海岸、外洋での海底掘削、ニュージーランド北部沖の海底浚渫(しゅんせつ)で岩石サンプルを採取。これらの試料を用いて広範囲におよぶ海底の地質学的構造を地図化し、ジーランディアの外縁に続く広大な砂岩層と、玄武岩質の礫岩堆積物を発見した。
砂岩は約9500万年前のもので、さらに古い花崗岩や火山礫を含んでいることから、ジーランディアが乾いた陸地であった時代には、火山高地から幾本もの川が流れ出て構造盆地を満たしていたと考えられる。この高地は、少なくとも3000万~5000万年前には活発な火山帯だったが、砂岩が堆積した時期にはすでに激しく浸食されていた可能性が高い。この堆積環境に類似した地形は、現在の米西部とメキシコ北西部の広域を占めるベイスン・アンド・レンジ地帯だろう。
玄武岩の礫岩は、海底火山活動があった証拠となる代表的な岩石で、約4000万年前にジーランディアが徐々に海に沈んでいったことを示している。
調査船によるオーストラリアと南極大陸に挟まれた海域の磁場マッピングでは、さまざまな磁気異常が見つかった。中でも地質学者たちが注目した磁気異常の1つは、ジーランディアの南側の境界に沿って大きな断層帯が存在することを示唆している。この断層は、ジーランディアが2億年以上前に南極大陸から分離し、独立した大陸となったときに形成された地殻の「傷跡」である可能性が高い。
この研究「Reconnaissance basement geology and tectonics of North Zealandia」(北ジーランディアの地下地質とテクトニクスの偵察)は、学術誌テクトニクスに掲載された。
(forbes.com 原文)