何しろ、2019年2月にハノイで行われた米朝首脳会談では、信頼していたトランプ米大統領(当時)との交渉が決裂。金正恩氏は帰りの特別列車の車内で、米朝協議を担当した金英哲党統一戦線部長(当時)らを土下座させ、激怒したと言われている。外交へのトラウマを消し去るほど、ロシアのプーチン大統領との会談の成果に手応えを感じているのだろう。
今回の訪問で目立ったのは、正恩氏の航空戦力再建にかける執着心だ。朝鮮中央通信によれば、正恩氏は15日、極東のコムソモリスク・ナ・アムーレにあるユーリ・ガガーリン航空機工場を訪れ、第5世代戦闘機のスホイ57に搭乗したほか、スホイ35戦闘機の試験飛行も視察した。正恩氏は「ロシアの航空機製作工業の豊かな自立的潜在力と現代性、絶え間なく新しい目標に向けた努力に深い感銘を受けた」と語ったという。
では、正恩氏はロシアからどんな支援が得られるだろうか。韓国の金塾・元国連大使は、北朝鮮が弾薬を提供する代わり、ロシアから食料や航空燃料、航空部品を手に入れる「簡単なディール」は成立するだろうと予想する。別の関係者によれば、7月に訪朝したロシアのショイグ国防相が、北朝鮮が生産する弾薬の品質に問題がないことを確認したという。北朝鮮製弾薬については湿度の問題から火薬が劣化して不発弾が多いとの指摘が出ていたが、慈江道江界などにある設備が整った生産工場から直接輸出すれば、品質に支障はないとの見方が出ている。