脚本家組合が勝ち取った「視聴データ開示」、ネットフリックスの打撃となる恐れ

(Photo by David Livingston/Getty Images)

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9月27日に148日間のストライキを終結させた全米脚本家組合(WGA)と全米映画テレビ制作者協会(AMPTP)の間の新たな合意によって、ネットフリックスなどのストリーミング各社は、番組の米国内および世界での視聴データを組合に報告することを義務づけられる。

これまで、ストリーミング事業者は、視聴データの詳細をコンテンツの提供元に提供しておらず、このことが、今回のストライキにおける交渉の焦点となっていた。脚本家たちは、自分が製作に参加した番組や映画が再放送されたり、ダウンロード販売された場合の報酬の算定の根拠となるパフォーマンス指標の開示を要求していた。

脚本家はこれまで何十年もの間、自分の番組や映画がテレビネットワークで再放送されたり、DVDとして販売され場合に報酬を受け取ってきた。しかし、ストリーミングにおいてはそれがなくなり、脚本家は、それらのプラットフォームで十分な報酬が支払われていないと訴えていた。

今回の新たな契約で、スタジオが開示する数字はNDA(秘密保持契約)の対象となるため一般には公開されない可能性があるが、WGAは集計したデータを公開できるかもしれない。

ネットフリックスなどのストリーミング企業はこれまで、視聴データを開示せずに、プロジェクトの中止や更新を決定することが可能で、透明性が欠如しているとの批判を浴びてきた。彼らはまた、高額の予算をかけた番組が大失敗した場合でも、それを認めずに済んでいた。

今回のWGAとの契約によってネットフリックスやディズニー、パラマウントのような上場企業は、株主との関係でも窮地に立たされる場合がありそうだ。カーネギーメロン大学で情報テクノロジーとマーケティングを教えるマイケル・スミス教授は、高額なプロジェクトが失敗したことが広く世間に知れ渡った場合に、これらの企業の株価が打撃を受ける可能性があるとフォーブスに語った。

現状でストリーミング各社の業績を測る指標には、収益やコスト、加入者数などが主に使用されているが「これらの企業は株価に影響がおよぶことを恐れて、番組の視聴データの公表を拒否してきた」とスミス教授は述べている。

スミス教授はまた、伝統的な放送ネットワークが、番組の視聴者数に応じて広告を販売しているのに対し、ストリーミング事業者はより柔軟な広告オプションを持っていると指摘し「このあたりが、今回のWGAとの契約の最も興味深い部分だと思う」と述べている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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