北米

2023.09.28

スペースXが米宇宙軍と契約、同社初で最大100億円規模

Tada Images / Shutterstock.com

イーロン・マスク率いるスペースXが、同社初となる米国宇宙軍との契約を今月初めに締結し、同社の衛星通信サービス「Starshield」を利用してカスタマイズされた衛星通信を軍に提供する。ウクライナの対ロシア攻撃を妨害したとして詮索されている同社による、新たな防衛事業の獲得だ。

契約規模は最大7000万ドル(約105億円)で「エンド・ツー・エンド・サービス、ユーザー端末、付属機器、ネットワーク管理およびその他の関連サービス」を軍に提供すると空軍のアン・ステファネク広報官は説明した。

約1500万ドル(約22億円)がスペースXに割り当てられるほか、陸軍、海軍、空軍および沿岸警備隊の「ミッションパートナー」54組を支援するための資金が提供されるとステファネクは語っている。

契約はスペースXのStarshieldプログラムの全期間を通して実施される。Starshiledは、民間向け衛星インターネットサービスであるStarlinkによく似た小規模バージョンとマスクが位置づけているもので「何千万ものユーザーを扱う必要がなく」、米国政府が所有して管理する。

スペースXは、米国宇宙軍の商用衛星通信部門から業務を請け負っている19社のうちの1社にすぎないとステファネクがフォーブスに話している。

スペースX以外に契約している会社の1つがViasat Inc.で、宇宙軍による「衛星通信およびその他の軍事システムにさらなる回復力を与える」ことを目標とする「Proliferated Low Earth Orbit(増殖した低地球軌道)」プログラムを通じて業務を与えられている。

スペースXはフォーブスのコメント要求に対し、ただちには応じていない。

Viasatの声明によると、米国宇宙軍から提供されている作業命令の累積契約金額は9億ドル(約1345億円)となる。

スペースXは昨年12月、同社のStarlinkサービスの軍事向けバリエーションの1つとして、政府機関に堅牢な衛星ネットワークを提供するStarshieldを発表した。Starshieldのウェブページには、同サービスは「要求の多い民間宇宙輸送ミッション」を支援するために、地球観察、安定した通信および衛星バス(衛星の基本機能に必要な機器と構造の総称)を提供するとあるが、それ以上の詳細は書かれていない。スペースXは連邦政府との共同作業の経験が豊富であり、政府はこれまでにNASAのミッションにスペースXのロケットを使用し、軍事監視衛星を打ち上げているとニューヨーク・タイムズは伝えている。しかし、軍事取引における同社の役割は批判にさらされている。

今月初めにマスクは、最近公開された同氏の伝記の中で、昨年ウクライナ政府がロシア艦隊をドローン攻撃するためにStarlinkの使用を要請した際、それを拒否したと書かれている部分の内容を認めた。その行動は、ウクライナのゼレンスキー大統領の顧問であるミハイロ・ポドリャクをはじめとする政府高官らから批判を浴びた。ポドリャクはX(旧ツイッター)への投稿で、マスクの行動の結果民間人たちが殺されていると書き、その結末は「無知と高い自尊心の代償」だと指摘した。マスクはXで弁解し、拒否したのは自身の会社による「重大な戦争行為への積極的な加担」を避けるためだったと語った。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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