欧州

2023.10.03 09:00

エネルギーシフトで後れをとる欧州、中国と米国がリードする理由

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現在進行中の新たなエネルギーシフトはとても複雑でコントロールしづらく、その動向を追うのが不可能に近いほどだ。このような状況の一因としては、国によって事業の前提となる条件が異なり、比較が難しい点が挙げられる。
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規制、税制、提供されている補助金、天然資源、人材発掘、サプライチェーンに至るまで、この地球上にある193カ国はすべて、事業環境が異なる。企業の幹部や最高経営責任者(CEO)は、与えられた条件の中で最善に向けた努力をしなければならない。

そうしたCEOの1人が、英国でかつてベンチャー企業を率いたのち、現在は米国とイタリアのスタートアップでトップを務めるラーズ・カールストロームだ。同氏が現在率いている米国のStatevolt、イタリアのItalvoltの2社は、再生可能エネルギーの貯蔵および電気自動車(EV)向けに成長を続けるバッテリー製造市場でシェアの獲得を目指している。

このセクターには確かに、ほぼ無限にも見える成長の可能性がある。だが、リスクや不確実性も非常に高い。経済環境が常に進化を続け、競争が激しいことと、公共政策的な環境が障害になる場合があるからだ。
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筆者は最近、カールストロームに話を聞き、エネルギーシフト推進のアプローチについて、米国とイタリアの違いはどんな点にあるか尋ねた(イタリアは、公共政策のかなりの部分を欧州連合[EU]が定めている)。その返答は、端的で明確だった。

「現在、欧州と米国の間には大きな違いがある」とカールストロームは指摘する。「私が見る限り、欧州ではエネルギーシフト全体が危機的状況に陥っている。自動車産業すべてを失うリスクに直面している。早急に手を打たなければ、欧州はもうすでにこの産業を失ってしまっている可能性すらあると思う」

カールストロームが、欧州の自動車産業の将来に関して抱く最大の懸念の1つは、中国との競争だ。中国政府は、鉱山の採掘や発電所の設置について、非常にわずかなリードタイムで許可を出すことができる。また、特定の事業領域に対する新たな補助金制度の開始や、急速な政策転換も可能だ。こうした点は、西側の民主主義国家と比べてとてつもないアドバンテージとなっている。

こうした機動性は、中国が非常に多くの鉱物資源や製造物のサプライチェーンを独占することを可能にしている。ソーラーパネルやEVバッテリー、さらにはEV自体といった製造物のことだ。

「イタリアをはじめとする国々も努力はしているが、中国が(西側諸国と比べて)少なくとも20年以上先を行っていることは、否定できない真実だ」とカールストロームは指摘する。「中国は、すべての鉱物資源を掌握している。そして今は、ドイツの会社が中国にいて、モダンでハイパフォーマンスな車を製造する方法を教えている。こうして作られた車が、今や欧州に逆輸出されているのだ。さらに悪いことに、これらの車は中国政府から補助金を得られるようになったため、非常に安い価格で販売され、各国の産業を弱体化させている」
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翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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