カールストロームによれば、欧州は、自らのアプローチの見直しに関して、一刻の猶予もない状況に追い込まれている。「今はまさに最後のチャンスだ。ここで是正できなければ、欧州は数十年にわたる不況に陥る恐れさえある」
欧州における自動車産業が、多数の雇用の受け皿になっていることを指摘しながら、カールストロームはこう付け加えた。「これらの仕事が失われれば、欧州が旅行者向けのテーマパークと化す未来が見えてくる。これは良い状況とは言えない。実のところ、私は非常に憂慮している」
このようなEVセクターにおける中国との競争激化も一因となって、カールストロームと同氏が率いるチームは、StatevoltとItalvoltの両社において、事業計画をEV用バッテリーから、主に据置型バッテリーに集中させる決断を下した。再生可能エネルギーで発電した電力を保存しておくための据置型バッテリーのことだ。
「我々は今、自分たちの軸足をエネルギー貯蔵の方向に移そうとしている」とカールストロームはいう。「第一に生産が容易だ。第二にリスクが低い。また利益率も良い。送電網のバランスをとる役割のほか、ソーラーパークやウィンドパーク(風力発電所)向けの製品など、こうした製品に対してはとても大きな需要がある」
「また、送電網の老朽化が激しい米国でも、バッテリーが必要とされている。米国では、バッテリーセルのニーズが非常に高い。これは好機だ」
米国では、認可プロセスや政府機関の動きの鈍さについて多くの不満が聞かれるが、カールストロームに言わせると、EU加盟国の状況はさらに官僚主義的で困難だという。
カールストロームは筆者とのインタビューで、カリフォルニア州南部地域の地方自治体職員の雇用創出プロジェクトを加速するその手腕について称賛していた。ソルトン湖沿岸のこの地域は、カールストロームが米国で率いるStatevoltの拠点がある場所だ。
「欧州の場合、地方自治体は、そもそも我々が企画するような大きなプロジェクトに慣れていない」とカールストロームは指摘する。「米国は、大きなプロジェクトに慣れている。そもそもの考え方の枠組みが違う」
「そうした状況は、イタリアでの我々のプロジェクトで問題を引き起こしている。我々は、最大で総額30億ユーロ(約4710億円)におよぶ投資の話をしている。米国では、みんな大きな数字に慣れているし、むしろこうした数字が好きだ」
カールストロームによれば、イタリアの官僚も、Italvoltの事業展開を促進しようと尽力してくれているという。しかし、EUの官僚主義というさらなる障壁が加わるため、必然的に事業が阻害され、認可までに時間を要する。
「結局のところ我々は、延期するか、あるいは、(スタートが遅れるため)とてつもない勢いで加速せざるを得ないか、どちらかを選ぶことを迫られる」とカールストロームは述べる。
今のところ、EU本部のあるブリュッセルや米国の首都ワシントンD.C.では、エネルギーシフトに関して「延期」と「加速」のどちらの選択肢も検討されていないようだ。
(forbes.com 原文)