安川:まさに、僕も今のブレインワークアウトは、言語化された身体知なので、画像生成AIや音楽生成AIが生み出す創造性など、非言語領域のブレインワークアウトを探求していきたいと思っています。
谷本:今は、人工知能に対して人間の知性とは?といったことに目が向いてしまいがちですが、それだけではないというのが、この本の言いたかったことなのだと理解しました。
安川:AI(人工知能)とHI(人間知性)を二項対立で考えても意味がなくて、AIをどのようにしてあくまで道具として使い、人間の知性(HI)をアップグレードしていくのか、それを問われる時代だと思います。
活版印刷の発明によって、大学の制度も目的も革命的に変わり、新しい科学や思想が生まれ、その後500年かけて近代化が進んできました。デジタル情報革命は、同様に今後最低300年かけて社会を変えていくと、孫正義社長は常々言ってました。でもその時に、人間の身体的、本質的な理解を持ったうえで、デジタルツールに接していないと、時に誤る。例えばメモの道具は、紙からスマホに変わっても、その場でメモをして後で必ず見返すという本質は、人間の短期記憶の特徴からくるものだから、500年前のレオナルド・ダ・ヴィンチも、50年前の梅棹忠夫氏も、今の私達も変わらないのです。
僕はこの本を、30代、40代のビジネスリーダーの方に是非読んでいただきたいです。100万部売れても、その100万人が何も変わらないと意味がない。それよりも、たった10部しか売れなくても、その10人が何か行動を起こし、その人の人生が変わり、できればさらに少しでも人類が進化してくれた方が、僕にはとても嬉しいことだからです。
谷本:ビジネスリーダーが普段から問うていることの答えが、安川さんからいくつか、いただけた気がしています。今日は、貴重なお話をありがとうございました。
安川 新一郎(やすかわ しんいちろう)◎グレートジャーニー合同会社代表、東京大学未来ビジョン研究センター特任研究員。1991年、一橋大学経済学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーへ入社、東京支社・シカゴ支社に勤務。99年、ソフトバンクに社長室長として入社、執行役員本部長等を歴任。2016年、社会課題を解決するコレクティブインパクト投資と未来社会実現のための企業支援に向けグレートジャーニー合同会社を創業。これまで東京都顧問、大阪府・市特別参与、内閣官房政府CIO補佐官、公益財団法人Well-being for Planet Earth共同創業者 兼 特別参与等での取り組みを通して、行政の現場や公益財団活動からの社会変革も模索している。