もう一つ、この本でこだわったのは、科学的根拠です。ダイエットでも筋トレでも、根拠を理解して実践するのと、ただ言われたメニューをこなすのとでは、納得感とモチベーションが変わってきます。例えば十分な睡眠時間やメモの習慣などは、よく重要だと言われていることです。しかし、「記憶と感情の整理を行う明け方のレム睡眠を確保するためにも、十分な睡眠時間が現代人には大切」とか、「記憶は短期記憶と長期記憶に別れ、短期記憶は数十秒なので、その場でメモが不可欠」といった科学的根拠を基に理解すると、実践の際の納得感が全く違います。
特に読書好きだったり、何かの有識者の方が、私の本を褒めてくれます。そうした方々は日頃から読書などを通して一定の知識を得ているため、それら個々の知識が人類史と生命科学の俯瞰した視点と構造化によってつながり、理解できることに知的興奮を感じてくれるようです。
脳が最も活性化するのは、読書か対話
未来について語る時、変化が早くて儚いと嘆く安川氏だが、そのような状況下で4〜5年間にわたり著書を執筆し続けた理由。それは、脳の正しい鍛え方は、今を生きる全ての人々が必要としているはずだという危機感を抱いていたから。そして、本に書いた理論を日々の生活で試みて、実践している自負があったからだという。安川氏はそれほど、今回の本に特別な思い入れを持っている。谷本:先程、YouTubeのお話が出ましたが、本とYouTubeのような映像コンテンツを比較した時、どのように考えていらっしゃいますか? そのあたりを、もう少し聞かせて下さい。
安川:映像の方が伝わりやすいものは沢山あると思いますし、YouTubeのコンテンツには、いいものもたくさんあるとは思います。友人がリコメンドするYouTubeはちゃんと見て、後からフォローしたりします。また、マイナーなテーマであっても、掘り下げられていて新しい発見があるものもある。ただし、僕はダラダラとは見ないように気をつけています。
脳は、頑張って負荷をかけないと鍛えられないんです。鍛えた筋肉、走った距離は嘘をつかない、という感じでしょうか(笑)。バラエティ番組やリール動画を一日見ていても、何も残っていないし、むしろ集中力などは破壊されてしまう。今は漫画を読むのにも多少の文字があって、抵抗があるなどという人も珍しくない時代です。
情報について能動的に頭を使わなければ、例えばEvernoteに色々な情報を機械的に保存していても、全く意味を持ちません。よく情報をリツイートだけしたり、フェイスブックグループに関連記事情報の共有だけをしている人がいますが、本人に会って話しても、別にそれらの情報から何か洞察をしているわけではないんですよね。