欧州

2023.09.27 10:00

長期戦決意の表れか ロシア、戦車のタービンを30年ぶりに新造中

遠藤宗生
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だから2週間前、ウラルバゴンザボートのアレクサンドル・ポタポフ最高経営責任者(CEO)が、重量46トン・乗員3人のT-80の生産を再び「いちから」始めると宣言したのは驚くべきことではなかった。

これは大変な取り組みだ。オムスクの工場にはT-80の主要な金型がどこかに転がっているだろうが、T-80を新たに組み立てるには、数万点におよぶ部品の生産を数百社にのぼるサプライヤーに再開してもらわなくてはならないのだ。ガスタービンエンジンもそうした部品のひとつということになる。

1975年にT-80の生産が始まって2001年にいったん終了するまでに、カルーガはこの戦車用に1000馬力のGTD-1000と1250馬力のGTD-1250を何千台も製造した。46トンの戦車用のエンジンで1000馬力超というのはなかなか強力である。ウクライナ製のT-64BV戦車も重量は42トンあるが、搭載されているディーゼルエンジンは850馬力にとどまっている。

T-80は高馬力エンジンのおかげで時速70kmという高速で走行できる。半面、燃費は悪く、航続距離は480km弱にとどまる。それにしても、カルーガはなぜぜわざわざ1500馬力という新型タービンを開発することにしたのだろうか。

空挺軍や海軍歩兵隊の連隊など、ロシア軍の一部部隊が燃費よりも速度を重視している場合、それらの部隊が新造のT-80にいちだんの馬力を求めるのは理にかなっている。1500馬力のエンジンによって次世代T-80は大きく成長する可能性がある。たとえば、ウラルバゴンザボートはT-80の装甲を数トン分追加しつつ、引き続き機動力を確保できるかもしれない。

カルーガ・タービン・プラントで着手された仕事は、ロシアが戦車の新造に向けて本気であることを強く示唆するものだ。もちろん、それはすぐ実現するわけではないが、ロシア側としてはそれでも構わないだろう。ウラルバゴンザボートの新たな改良型T-80の生産体制が整うまでには、数カ月あるいは1年以上かかるかもしれない。

戦争が終わる兆しが見られないのを考えれば、1年でも早いと言えるかもしれない。ウラルバゴンザボートがT-80を新たに生産できるようになったときには、カルーガも新型GTD-1500タービンを納入できるようになっているかもしれない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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