世界貿易機関(WTO)が2023年9月に発表した「World Trade Report 2023」によると、ロシアのウクライナ侵攻を受けた封鎖と対ロシア制裁によって、輸出入の流れが妨げられ、ブロック間ならびにブロック内の貿易が低迷していることが示された。
同報告書によると、2022年1月を指数算出の起点(100)とした場合、地政学的ブロック間の貿易、つまり米国と欧州を含む西側ブロック諸国と、中国やロシア、サウジアラビアを含む東側ブロック諸国間の貿易は、2022年初めから終わりまでの1年間で10%以上も減少している。
ブロック内の貿易については、2022年1月を100とすると、ウクライナ侵攻が始まった2022年2月下旬前後の指数はおよそ109ポイントだったが、同年12月には100ポイントまで再び減少している。
ロシアがウクライナに戦争を仕かけて以来、西側ブロック諸国はロシア産原油の輸入を避けており、それが影響したことは間違いない。コモディティ価格が上昇するなか、ロシアは、経済制裁によって余った貯蔵分の売却に積極的で、インドと中国が輸入量を増加。その過程で、世界的な貿易パターンが変化した。
WTO報告書によると、貿易パターンは、それよりも前に、米中間の貿易摩擦によっても変化を始めていた。米国が中国との貿易を避け、友好国との貿易増加に努めたからだ。
多様化は、ニアショアリング(既存の事業拠点から、地理的に近い近隣国に事業を移転すること)を推進する根拠として挙げられるものの1つだ。現状を正確に表すには、ニアショアリングというよりも、フレンドショアリング(同一の地政学的ブロックに属すると思われる国を相手に、資源・製品の調達や貿易を行なうこと)と言ったほうがいいいだろう。