UNDER 30

2023.09.25 14:30

田舎で挑戦する魅力を伝えるローカルベンチャーの旗手

濱田祐太

そのビール事業「かけはしブルーイング」の2023年の販売本数は、前年より約3万本多い10万本超えを想定。関西を中心に東京の飲食店など約400店で味わえるほか、ナチュラルローソンでも取り扱っている。今年はシンガポールにも輸出し、海外展開にも着手した。海外への販路拡大は、町にインバウンド客を呼び込むことが目的だ。醸造所を観光の拠点として与謝野町に招くツアーも計画している。台湾のほか、タイなどASEAN諸国への展開も視野に入れる。そして、「いずれは町内にASOBIの自社工場を立てて製造したい」と話す。
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与謝野産の新鮮なホップを使用し、柑橘のような香りが特徴のクラフトビール。

与謝野産の新鮮なホップを使用し、柑橘のような香りが特徴のクラフトビール。

目指す会社像は地域に根付いた「スポーツチーム」

ローカルの魅力とは何か━━。その問いに濱田は「磨き上げられていない資源が山ほどあること」と答えた。食や文化、自然に不動産。手付かずのものを磨くことで生まれる「可能性」、地域の稼ぐ力を上げる「社会性」も魅力だと。「東京で起業しても『頑張って』と言われるだけ。人口2万人の町で会社を作ってみんなで稼ぎましょうと言ったら、周りは応援してくれます」。目指す会社像は「スポーツチーム」という。地域の人を巻き込み、会社の成長をともに喜び合えるような存在を描く。

「TANGOYA BREWERY & PUBLIC HOUSE」は土地を購入して新築した。総額約8000万円。20代の若者が借金をし、リスクを承知で挑む「覚悟」を見せたことで、「わしらも何かやらなあかんやろ」という空気が町に生まれているのを感じるという。「7年前に休館した駅の近くの旅館も再オープンして、弊社が運営をサポートしています」

起業した当初のこと。町の交流施設運営の受託事業に手を挙げたら、町議会で否決された。「大学生は事業でなく授業を」。町議からそんな言葉を向けられた。それから4年。2025年に開設100周年を迎える与謝野駅をみんなで盛り上げようと、60代、70代の区長や会社経営者のなかに、濱田らローカルフラッグのメンバーも加わって周年企画を考えている。
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ローカルフラッグのメンバーは濱田を入れて現在6人。ビール事業のほかに、行政から委託を受けた移住定住の窓口運営や、企業の人材研修、事業承継の講座など「地域プロデュース事業」も展開する。行政予算に頼った「まちづくり会社」ではなく、ビール事業の収益で、自分たちが地域にとって必要と思う活動をする自律した会社運営を目指している。

地元住民を巻き込み、20代のメンバーとともにビール事業でまちの活性化に取り組む。

地元住民を巻き込み、20代のメンバーとともにビール事業でまちの活性化に取り組む。


かつて濱田が各地へ視察に回ったように、ローカルフラッグの活動に興味をもつ大学生らが訪ねてくるようになった。「自分の田舎でチャレンジしたいという同じ思いをもつ若者はいます。そうした人を最大限応援していきたい」と濱田。ローカルフラッグのミッションは「地域の旗振り役になる」。ローカルベンチャーとして次世代のロールモデルになる。その思いで突き進む。


はまだ・ゆうた◎1996年生まれ。京都府与謝野町出身。 2019年関西学院大学在学中に、まちづく り会社「ローカルフラッグ」を創業。2020 年には、与謝野町産ホップを使用したクラ フトビール「ASOBI」をリリース。2023年 7月には京都丹後鉄道「与謝野駅」前に自 社醸造所&飲食店を開業し、観光拠点と して地域活性化を目指す。「持続可能な地 域をつくる」をビジョンに、地域の旗振り 役を担うローカルベンチャー。

文=斉藤泰生

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