私が産業政策に携わっていたときには、八尾市内の企業立地できる土地は飽和状態で企業誘致はほぼ不可能な状態でした。近隣地域でもかなりの優遇措置を講じて大企業を立地したものの、10年足らずで事業撤退するなんて話も耳にしていました。そうなるとその地域では、一気に雇用が失われたり、それまで従業員が活用していた飲食店や身の回りの商品を販売する産業が打撃を受けたりします。
そこで私が出会ったのが、エコノミックガーデニングという手法です。
そもそもエコノミックガーデニングとは?
エコノミックガーデニングは、1980年代後半にアメリカのコロラド州リトルトン市で初めて実施され、15年間で雇用2倍、税収3倍を実現したことで注目を浴びた地域経済活性化施策です。直訳すると「経済の庭づくり」ですが、企業が成長しやすい土壌(ビジネス環境)をガーデナー(行政や支援者)などがしっかり手入れしながらつくっていく取り組みのことです。この手法では、企業誘致だけに頼るのではなく、地域の中小企業が成長することによる地域経済活性化をめざすところに違いがあります。行政や商工会議所、銀行などが連携し、地域の中小企業が活動しやすく成長できるビジネス環境をつくるための施策を展開していくのです。
八尾で始めた「みせるばやお」も、八尾市のの中小企業が成長できるビジネス環境を行政主導だけではなく、自分たちの手で構築していこうというものです。(Forbes JAPAN本誌でも「八尾モデル」と紹介されました)
みせるばやおというサードプレイスづくり
産学官金が連携するコンソーシアム「みせるばやお」は2018年5月に発足した中小企業コンソーシアムであり、同年8月8日に近鉄八尾駅すぐの商業施設LINOASの8Fに誕生したものづくり体験施設の名称でもあります。
その名の通り、人々にものづくりや地域の仕事を「見せる場」であり、参加企業も含めて人々に地域の魅力を「魅せる場」でもあります。
みせるばやおには、「まち、ひと、こうば、くらしを元気にする!」という非常にシンプルなビジョンがあり、そのために事業の3つの柱を掲げ、現在約130社が集まって共同運営をしています。