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2023.09.26 17:00

自治体でのChatGPT活用術 神戸市ではSNS運用に導入

文書作成能力をSNS投稿に活用


前述のように、神戸市は公式SNSの運用にChatGPTを活用している。SNS投稿のネタの1つに、イベントの開催や支援金の受取方法などをお知らせする「プレス資料(記者発表資料)」を用いている。

新聞やテレビの記者に配布されるプレス資料は、それぞれの事業を担当する部署が作成しているので、専門用語を使った硬い文章で書かれている。市政に詳しい記者たちがパソコンで見るのが前提なので、一般の住民にはわかりにくいものとなっている。

神戸市では、1日20件ほどあるプレス資料から、住民に身近な話題を5つほど選んで、SNSで投稿している。

この際に何よりも大事になるのは、誰もがスマホでチラ見するだけで理解できるように、短く平易な日本語に書き直すことだ。この作業を担当しているのが、広報戦略部に在籍する奥田雄大と楊香緒理だ。

奥田 雄大と楊 香緒理.

奥田 雄大と楊 香緒理.


楊は、絵文字や記号を使った投稿文の作成が得意だ。しかし、SNS投稿に休みはない。楊が休暇をとったり体調を崩したりしたときに、奥田が代わりを務めるのだが、彼女のようなかわいらしいトーンの文が思い浮かばないという悩みがあった。

そこで奥田が着目したのは、ChatGPTの「文章生成」の能力だった。

そのやり方は簡単だ。プレス資料と楊が作成した過去の投稿文をChatGPTに入力して、「以下のプレス文からツイート案を作成してください。過去のツイート文にテイストを合わせてください」と指示するだけ。すると、絵文字を使った平易で短い投稿案を生成してくるのだ。

最初は、「かわいらしい」「絵文字を多用」という型にはめたプロンプトで指示してみたが、試行を重ねるうちに、どうやら過去の投稿文のほうが有効だと判った。しかも、ChatGPTがニュースで取り上げられる前、今年3月から試行してきたというから、驚きだ。

ChatGPTで作成した実際のSNS投稿

ChatGPTで作成した実際のSNS投稿


ただ、自治体でこのように生成AIを利用しているのはまだ珍しい。神戸市役所ではChatGPTの活用を職員らが共有する勉強会が8月23日に開かれたが、広報以外の他の部署ではSNS運用のように市民の目に触れる業務に使っている例はなかった。

ChatGPTはわずかな工夫で手間を減らせる可能性はある。だが、利用しようとした職員自身が、自らの仕事を手抜きなのではと感じて、積極的に使うのをためらっているのかもしれない。

だが、今回のSNS運用の事例のように、職員それぞれの得意、不得意を補い合うために、新しいテクノロジーを使うのは、むしろ賢明なやり方ではないだろうか。

奥田が「AIの進歩はこれからもどんどん進んでいく。自治体職員は使いこなしてやろうという気持ちを持つべきだ」と雄弁に語った言葉が、頭の隅に残った。

連載:地方発イノベーションの秘訣
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