これまでは経由便しか選択肢がなかったが、今年3月にエル・アル航空の直行便が就航。成田から11時間とアクセスしやすくなった。全日空との提携も決まり、年内に増便を目指すなど、イスラエル政府も「日本からの渡航者を増やしたい」と力を入れている。
観光面で有名なのは、やはり聖地エルサレムだ。実際、観光省の調べでは、イスラエルを訪れる人の27%が巡礼者で、30%が史跡を目的としているという。文化色が強いが、自然も豊かで、地中海と紅海に面し、コンパクトな国土に砂漠、高原、湖が存在する。ビジネス面では、年間1000社以上を生み出す“スタートアップ国家”として、その動向が世界から注目されている。
では実際、その地に行くと、何を見たり得たりできるのか。観光でメジャーなエルサレムや死海でなく、“中東のシリコンバレー”と称され、ビジネスのイメージが強いテルアビブについて取り上げてみたい。
古代の顔をもつリゾートシティ
空の玄関口、ベン・グリオン国際空港から車で約20分。高層ビルが立ち並ぶテルアビブは、実は地中海リゾートでもある。特に欧米人に親しまれ、乾季である5月から10月がピークということで、訪れた6月のビーチは人であふれていた。テルアビブ自体の人口は約40万人だが、東京都市圏のように隣接エリアを含むと400万人を超え、首都エルサレムの4倍の規模となる。これだけのメトロポリタンながら、街の歴史は浅く、110年前には“ただの砂丘”だったというから驚く。
かつては現テルアビブの南部にある「ヤッファ」が交易の中心で、約4000年前からアラブ人の街として栄えてきた。1900年代初頭、ヨーロッパからのユダヤ系移民が急増し、住環境が悪化したことで、一部のファミリーが独立。“ユダヤ人の街”の開発に乗り出した。
暑さをしのぐために海風を生かす都市設計、人々が集いやすい街づくりが進められ、そのなかでも、東欧からの移民の影響を受け1920~50年代にかけて建てられたバウハウス様式の建築群は、「テルアビブの白い都市(ホワイトシティ)」として世界文化遺産に登録されている。
ヤッファはその後、1950年にテルアビブに併合されたが、石畳の旧市街は今も残り、足を踏み入れるとタイムスリップしたかの気分を味わえる。隣接する新市街には蚤の市が広がり、ガラクタから掘り出し物、お土産まで買い物が楽しいエリア。夜はレストランやバーが遅くまで賑わう。