帝国データバンクの調査によれば、コロナ禍の「事業再構築補助金」などを利用して、客足が途絶えた飲食店などが無人販売店を始めたケースが多いという。じつに、現在の店舗の約6割は2022年度に出店されている。飲食以外のまったく別業界から参入した業者も少なくない。なかでも名が知られているのが「餃子の雪松」だ。昭和15年、群馬県の水上で創業した中華料理店「雪松」が誇る老舗の味を冷凍にして販売したのが最初だと言われているが、その無人販売店は2020年には数十店舗だったものが2022年6月には400店舗を超えるまでに増えている。
冷凍餃子の無人販売店が人気となっている理由は、スーパーなどで売られている大手メーカーの冷凍餃子とは違う、名店の味がそのまま味わえる点にある。1パック1000円とお釣りがいらないことや、24時間営業という利便性も大きい。出店者側からすると、人件費がかからず、小さな店舗に冷凍庫とお金を入れる箱と防犯カメラさえ準備すれば開店できる手軽さがある。小さな店なら、開店資金は100万円程度だという。
メディアでも取り上げられ話題を呼んでいるとは言え、実際に無人販売店を利用した人は、日本冷凍食品協会の調べでは2割以下だという。今のところ店舗数は飽和状態に見えるが、未経験の消費者を呼び込めれば事業のチャンスは大いに拡大する。現在は、餃子以外の冷凍食品を扱う店が増えている。餃子の雪松も、同店舗での冷凍ラーメンの販売を開始したほか、冷凍もつ煮込みを販売する「もつ煮込み みつ子」も展開している。冷凍調理食品の支出額は、2020年から大きく伸びている。食品の冷凍技術が格段に進歩している今、もっといろいろな食品が販売できるはず。そこが大いに楽しみなところだ。
路上に自動販売機が置かれているだけで驚く外国人がいる。無人販売店は治安のよい日本だからこそ成り立つ業態だ。それがさらに発展して安定したビジネスになれば、単に珍しいだけではない、本当の意味で世界に誇れる文化になるだろう。
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