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2023.09.21 16:15

顧客インサイトを引き出す鍵は? 小売カンファレンス「eTail Boston」レポート

2. 体験型リテールが引き続き強力な売上促進要因になる

テクノロジーの進歩に伴い、没入型体験はより身近でリアルなものとなり、小売業の様々な側面に統合されることで、消費者のトラフィックと収益向上を促進すると思われます。

AR/VR(拡張現実)技術は、没入型体験の創出において極めて重要な役割を果たすでしょう。VRは、ユーザーを物理的な世界から切り離し、完全にシミュレートされた環境を提供し、ARは現実世界にデジタルコンテンツを重ね合わせます。

ブランドや小売企業は、没入型インスタレーション、バーチャルショールーム、ブランド体験を創造し、消費者の記憶に残るような、インパクトのある方法で製品やサービスに触れ合わせることができます。このような体験は、ブランドロイヤリティの構築、ブランド認知度の向上、顧客エンゲージメントの強化に役立ち、収益促進にもつながります。

メタバースは、ブランドが没入型体験を提供するための重要なチャネルとして台頭しています。Tailored Brands社のSEOおよびコンテンツマーケティング担当ディレクターであるAli Haris氏は、ショッピング体験を再定義することに重点を置いている同社のメタバースへの取り組みについて説明しました。

同社は、ARとVRを活用して、デジタルと物理的な商取引のギャップを埋めることを目指しているとし、メタバースはまだ始まったばかりではあるが、今後、より多くの人々がARとVRを活用できるようになると述べました。

しかし、ブランドや小売企業がメタバースを自社の戦略に統合する際には、強固で利用しやすい技術インフラが必要であること、導入率が低いこと、ROI(投資対効果)に対する懸念などの課題に直面する可能性があることも付け加えました。

Coresight Researchのアナリストであり、本稿の執筆者でもあるSunny Zheng氏によると、メタバースが近い将来、実店舗やオンラインストアに取って代わることはないと見ているものの、既存の小売企業を補完・補強し、新たな次元の交流や関わりを提供するようになると予測しているといいます。

多様性や表現はメタバースの核心であり、デジタル世界のユーザーは、なりたい自分になることができ、さまざまなアバターのサイズ、形、年齢、人種、性別、能力を体験することができます。

そのため、ブランドや小売企業は、幅広い表現を提供し、メタバースにおけるユーザーのトレンドや多様な需要を活用するために、テクノロジーベンダーと協力して、ウェアラブルのユニークなコレクションを作ったり、魅力的な体験を作り上げたりしています。
Tailored Brands社のSEOおよびコンテンツマーケティング担当ディレクターのAli Haris氏(左)とCoresight Researchのアナリスト、Sunny Zheng氏(右)。
出典:Coresight Research

体験型リテールのもう一つの重要な柱は、実店舗で面白い体験を提供することで、競合他社と差別化し、買い物客の注目を集めることができる点です。魅力的な体験を創造することで、実店舗へ消費者が足を運び、直接関わる機会を増やすことができます。

フットウェアブランドAetrexのテクノロジー&オーソティックス事業開発担当SVPである Jason Israel氏は、消費者が自分の靴のサイズを確認できるよう、店舗に3Dフットスキャナーを設置したことを紹介し、「お客様はどこで買い物をしようとも、自分のサイズを知ることができます」と説明しました。
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文=RxR Innovation Initiative

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