“ALIVE IN TIME” 今、この時を生きる人へ──。
今回のポップアップイベントのテーマとなったこの言葉は、2023年に刷新されたグランドセイコーのブランドメッセージである。1960年に誕生して以来、今日まで60年以上にわたって進化し続け、日本が世界に誇るウォッチブランドとなったグランドセイコー。それは一瞬一瞬を大切にし、弛まぬ研鑽と革新を重ねてきた結果にほかならない。つまりそのメッセージは、ユーザーへの提言であるとともに、未来に向けたグランドセイコーの新たな決意表明でもある。そう、いまこの瞬間を生きるには、五感を研ぎ澄まし、“いま”という時を全身全霊で感じなければならない。“ALIVE IN TIME through the FIVE SENSES”というイベントのコンセプトには、五感を通していまを生きる大切さ、そしてグランドセイコーに秘められたクラフツマンシップや革新性をより深く知ってほしいという、意図が込められているのである。
五感に訴えかける4つのエリアを体感
本来、腕時計は視覚によって時を認識するもの。五感で表現されるグランドセイコーの世界とは、果たしてどのようなものなのか。かくして会場となった表参道交差点のイベントスペース「WALL&WALL」は、「視覚」「聴覚」「触覚」、そして「味覚/嗅覚」の4つのエリアに分けられ、それぞれの感覚を通してグランドセイコーが表現された。
本誌が特別に招待した経営者の面々が、まず足を踏み入れたのは「視覚」エリア。ここにはグランドセイコーの心臓部である、メカニカル、スプリングドライブ、クオーツの3つの専用ムーブメントを展示。それぞれ組み立てる前のパーツの状態で透明のアクリル樹脂内に整然と浮かべられており、グランドセイコーのブランドフィロソフィー“THE NATURE OF TIME”を表現する水の揺らめきやきらめきをイメージした映像と重ね合わせることで、まるで現代アートのような視覚効果が表現されている。
ムーブメントのパーツは、最も多いメカニカルムーブメントで実に200点以上。10ミクロン単位で精密加工されたそれぞれのパーツは非常に高精細であり、眼を見張る美しさだ。これらを熟練職人が1/100mm単位で調整し、直径3cmほどのムーブメントに手作業で組み上げる。その驚くべき精緻さとクラフツマンシップに、参加者は息を飲んでいた。
なお、会場内に一歩入ると、甘くスパイスの効いたウッディな香りが心地よく鼻腔をくすぐることに気付く。これはブランドフィロソフィー“THE NATURE OF TIME”と新たなブランドメッセージ“ALIVE IN TIME”から着想を得て調合された、グランドセイコーのオリジナルシグネチャーセントの香りだそう。クロモジやヒノキ、ヒバ、ローズマリー、サンダルウッドなどを用いた100%天然成分の香りであり、そこには「かけがえのない今を生き、変わり続ける未来へと思いを馳せ、居心地の良さを感じさせる」という思いが込められている。
世界を魅了する美しくも精緻な世界
次に参加者が訪れた「聴覚」エリアは、グランドセイコー初のコンプリケーション機構「コンスタントフォース トゥールビヨン」がモチーフ。同機構は機械式時計の最重要パーツのひとつであるテンプに動力を均等に供給するコンスタントフォース機構と、重力の影響を軽減するトゥールビヨン機構を同軸上に一体化させた世界初の機構であり、2020年にコンセプトムーブメントを発表。さらに研究開発を重ねた結果、2022年に「グランドセイコー Kodo コンスタントフォース トゥールビヨン」として製品化(¥44,000,000/世界限定20本)を実現させ、時計界のアカデミー賞と言われるジュネーブウォッチグランプリの2022年度クロノメトリー賞を受賞した金字塔的モデルである。その特徴は驚異的な精度に加え、Kodo=鼓動と表現された独特の刻音だ。高度な匠の技によってコンスタントフォースとトゥールビヨンを完全に同期させることで生まれる16ビートのリズムは、まさに鼓動のように小気味よく耳に響くが、「聴覚」エリアではそのリズムと壁に並べられた無数の青色LEDがシンクロして点滅。音と光によって表現された没入感のあるインスタレーションとなっており、「Kodo」の精緻さを聴覚と視覚によって体感できる幻想的な空間であった。
そんな音と光のコリドーを抜けると、光と影が間接照明によって心地よく演出されたエボリューション9 コレクションの代表的な3つのモデルなど、グランドセイコーの注目モデルの実機が参加者ひとりひとりの腕周りに合わせて用意されており、思い思いに試着して装着感を味わっていた。
「私は手首が細いので、グランドセイコーは重厚で似合わないのでは、という先入観がありました。ですが、実際に着けてみると思っていた以上に軽く、体に馴染む感覚があったのはとても新鮮でした」
参加者のひとりであるLecto株式会社CEO小山 裕は、グランドセイコーの装着感をこう評する。精度や視認性、審美性、耐久性に並び、グランドセイコーが重視する装着性。それはケースに納めて眺めるのではなく、毎日の瞬間を共に過ごす“究極の実用時計”たらんとするには不可欠な要素なのだ。
一瞬一瞬、ひとつひとつに情熱を注ぐ大切さ
「皆様、ようこそおいでくださいました。このエリアではグランドセイコーのブランドフィロソフィー“THE NATURE OF TIME”よりインスパイアされた、未知の味覚と嗅覚をご提供させていただきます」こう言ってグランドセイコーの実機を装着した参加者を「味覚/嗅覚」エリアに迎え入れたのは、各国に「KOFFEE MAMEYA」を展開し、スペシャルティコーヒーを世界に広めた先駆者である國友栄一である。同エリアではミシュラン2つ星を獲得した東京・神宮前の和食レストラン「傳」のオーナーシェフ長谷川在佑と國友が共作した、特別な食のコースをプレゼンテーション。
和食とコーヒーの融合という、革新的な試みによって生み出された今回だけのスペシャルメニューは独創的なものばかりであり、まさに未体験の味と香りを提案。例えばフルーティな味わいで近年話題となっている、エチオピア産のコーヒー「ゲシャビレッジ オマ」。その豆を牛乳に約8時間浸して抽出したミルクブリューコーヒーにポン酢を混ぜ、フィルターで濾して作ったソースを牛肉料理に使うなど、どの料理もコーヒーと食材のマッチングが綿密に計算されている。それは無数のパーツが連携し、ひとつになることで精緻な時を刻む、グランドセイコーに通底するのだ。
「当初はグランドセイコーのコンセプトと料理が自分のなかで結びつきませんでしたが、國友さんの案内を聞きながらいただくにつれ、ひとつひとつの料理がとてもきめ細かく、コーヒーをはじめ様々な食材を丁寧に組み合わせて作られていることが分かりました。それは芸術のようでもあり、腕に着けたグランドセイコーにも通じる匠の技を感じたのです。まさに五感で味わう素晴らしい体験でした」
スペシャルメニューを堪能した参加者のイナミ スペース ラボラトリー株式会社代表取締役の稲波紀明は、ふたりのトップクリエイターがグランドセイコーのために作り出した食体験をこう絶賛した。
こうして4つのエリアでグランドセイコーの真髄に五感で触れた参加者たち。彼らが最後に案内されたのは、ジュネーブで毎年開催される世界最高峰のラグジュアリーウォッチの展示会であり、日本からは唯一グランドセイコーが参加した「Watches and Wonders Geneva 2023」の展示スペースを再現したスペシャルエリア。最新モデルをはじめ、貴重な「Kodo コンスタントフォース トゥールビヨン」の実機や1960年製の初代モデルなども展示されており、長い歴史を通して築き上げた、クラフツマンシップと革新性にあふれるグランドセイコーの世界観に、参加者はあらためて見入っていた。
そして株式会社ペイトナー代表取締役社長の阪井 優は、今回参加したイベントをこう締め括る。
「私は時計が好きで色々なブランドを見てきましたが、今回初めてグランドセイコーに触れ、魅力的な時計だと感じました。そして、その熟練職人の技術の結晶である精緻な美しさだけでなく、いただいた料理も食器やカトラリー類まで入念に選び抜かれていることに感銘を受けました。弊社はスモールビジネスを支援するwebサービスを提供していますが、何事も細部まで情熱とこだわりを注ぐことが大切ということをあらためて学ばせてもらったのです」
細部まで妥協することなくこだわりを貫き、革新を積み重ねてこそ、人々の五感に訴えかける唯一無二のビジネスが生まれる。いまを生きる経営者にとっても、大いに示唆に富むイベントとなった。
グランドセイコー
https://store.grand-seiko.com/