時価総額1.6兆円、米インスタカートIPOの勝ち組と負け組

Photo by Jakub Porzycki/NurPhoto via Getty Images

食品宅配サービス「インスタカート」を運営する米メープルベアは9月19日、ナスダック市場に上場した。同社のIPOは、一部の初期投資家に大勝利をもたらしたが、パンデミックの半ばの膨張した評価額で投資を行ったファンドは含み損を抱えている。

メープルベアは、公開価格を1株30ドルに設定し、それに基づく時価総額は99億ドルだったが、株価は19日に12%上昇し、終値ベースの時価総額は110億ドル(約1兆6000億円)を突破した。

それでも現状の株価は、2021年3月に評価額385億ドルをつけた際の1株125ドルをはるかに下回る水準だ。2021年の調達ラウンドを主導したアンドリーセン・ホロウィッツやD1キャピタル、フィデリティ、セコイア、ティー・ロウ・プライスらは、2年前の投資から約73%の含み損を抱えている。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、ティー・ロウ・プライスや、DSTグローバル、ゼネラルカタリストらが、それぞれ5000万ドル以上をインスタカートに投資し、少なくとも35%の含み損だと報じている。

とはいえ、インスタカートのIPOはいくつかの著名投資家たちを勝ち組にした。セコイアは、2013年に同社の850万ドルのシリーズAを主導したが、その当時の1株あたりの価値は0.24ドルで、約1万4000%のリターンを得たことになる。

セコイアが2013年に投じた金額は不明だが、同社はインスタカートの18%、つまり約20億ドル相当の株式を保有している。Yコンビネータやコースラ・ベンチャーズ、カナン・パートナーズらも、2012年の設立当初にシード資金を提供したが、彼らの出資比率は5%未満で、現状の持ち分がいくらかは定かではない。

インスタカートの3人の共同創業者らは、全員がIPOにあたって一部の持ち株を現金化した。提出書類によると、ブランドン・レオナルドとマックスウェル・レオナルドは780万株のうちの150万株をIPO価格の30ドルで売却し、それぞれ約4300万ドルを手に入れた。創業当初からCEOを務めたアプアバ・メフタは、2890万株のうち70万株を売却し、2100万ドルを手にした。

2021年8月にCEOを退任したメフタは、IPOにあたり現CEOのフィジー・シモに取締役会会長の座を譲り、会社を離れたが、現在の持ち株の価値は約13億ドルとされている。彼は、2020年6月にビリオネアの仲間入りを果たしていた

WSJによると、2015年のシリーズCラウンド以降にインスタカートに投資した投資家のリターンは、ナスダックに投資した場合を下回っている。その当時、1株当たり13.31ドルでインスタカートに出資した投資家のリターンは約160%だが、同期間のナスダック総合指数の上昇率は190%だ。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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