2023.09.28 07:00

訪日外国人客数が回復 サステナブルな観光のあり方とは

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訪日外国人観光客数が急速に回復し、日本で暮らす人々の国内旅行も活発になる中、日本から海外旅行へ出向く人の数は2019年の水準の約4割にとどまっています。
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サステナブルな旅行をしたいと思ってはいるものの、実際には、生活費の危機により、多くの人がサステナブルな選択に追加料金を支払うことに難しさを感じています。

サステナブルでリジェネラティブな観光の未来を築くためには、旅行者の意識と行動に変化がもたらされる必要があります。本題についてWEFのアジェンダからご紹介します。


昨年10月に、新型コロナウイルスの水際対策が大幅に緩和されて以来、日本でも海外からの観光客が順調に戻ってきています。
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日本政府観光局(JNTO)によると、7月の訪日外国人観光客数は232万600人に上り、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年の水準の約8割まで回復しました。

また、国内・海外旅行も活発になってきています。JTBが発表した旅行動向調査の結果によると、7月と8月の夏休みシーズンに国内旅行をした人の数は、7250万人でほぼ2019年水準まで回復。

一方、海外旅行をした人の数は120万人と、2019年の水準の約4割にとどまりました。同調査に対し、海外旅行へ行きたくても行けない、または行きたくないとする回答の理由には、治安や健康面でまだ安心できないこと、海外旅行に伴う出入国手続きに手間がかかること、そして、円安や物価高などが挙げられています。

アウトバウンドの回復に勢いをつけるためには、安全で経済的負担の少ない環境が整う必要があるでしょう。

オーバーツーリズム、対策を急ぐ日本政府

インバウンドの復活が地域経済に活力を与えている一方、懸念されているのは、人気観光地に訪れる観光客が過剰に増加するオーバーツーリズムの再燃です。

これに対し岸田首相は、混雑や交通渋滞、ゴミ問題、騒音など、観光が地域の生活に負の影響を及ぼすオーバーツーリズムを重要課題と受け止め、今秋にも対策を取りまとめる考えを表明しています。

新型コロナウイルス感染拡大以前より、日本の一部の観光地では、オーバーツーリズムが問題視されるようになっていました。パンデミックによる打撃を受けた日本の観光産業や観光地が、復活に向けて歩みを進める今、こうした課題を変革のチャンスと捉え、観光のあり方をよりサステナブルなものへと舵を切る時が来ていると言えるでしょう。

ホテルが展開するサステナブルな取り組み

サステナブルな取り組みは、全国のホテルで加速しています。国の重要文化財に指定されている東京駅の駅舎内に位置する、東京ステーションホテルは、宿泊時に生じる二酸化炭素排出量を実質ゼロにする「CO2ゼロSTAY」の取り組みを展開。

カーボン・オフセットの仕組みを利用したこの取り組みは、宿泊で発生する二酸化炭素排出量を算定・可視化し、その排出相当分を削減活動へ投資することで、実質ゼロにします。その費用は、全額ホテルが負担するため、宿泊客は同ホテルに滞在するだけで森林保全活動や再生エネルギーの拡大に協力することになります。
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文=Naoko Tochibayashi, Public Engagement Lead, World Economic Forum, Japan; Naoko Kutty, Writer, Forum Agenda

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