ビジネス

2023.10.07 11:00

「Connecting the dots」 人との出会いで世界は広がる

フードロスバンク 代表取締役社長 山田早輝子

中道:フードロスバンクの創業は日本に帰ってきてからですか。
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山田:そうです。帰国するとすぐにコロナになり、飲食業界の方が大打撃を受けていたので、ホテルの総料理長やキッチンメーカーと組んでトップシェフがつくるおうちごはんを提供する活動を始めました。

その関係で、農家さんや漁師さんたちが大変なことになっているのを知って、調べていくとコロナ以前に規格外品などで大変な思いをされていることを知りました。野菜でも魚でも、人間が勝手に決めた規格で命の選別をして、そこに収まらないものは捨ててしまう。そういうものをどうにか使えるようにしたいと思ってフードロスバンクを立ち上げました。

中道:山田さんはあえてハイブランドの人たちにアプローチしましたが、面白い視点ですよね。
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山田:最初にこのアイデアを持って行ったところに、そんな規格外品なんか使ったらうちのブランドに傷がつくと断られたのです。だから品質を一番大事にしているハイブランドの人たちが使ってくれたら、それが担保になると考えました。

もう1つは、地球の温室効果ガスの半分以上を排出しているのは10%の富裕層の人たちなので、彼らが好むブランドに使ってもらうことで、この問題について考えたり気づいたりするきっかけになれば費用対効果が高いのではないかと思ったのです。

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中道:その戦略的な視点がすばらしい。活動を始めて3年目になりますが、何か感じることはありますか。

山田:ANAさんが社員食堂で「れすきゅうまい」を使ってくださるなど、最近は日本の企業の方々とも一緒にやらせていただいています。あとは次世代を担う子どもたちとも一緒に取り組んでいます。

今の子どもたちは環境問題をすごく真剣に捉えていますが、子どもだからできることは違うがパワーアイデアは素晴らしい。そこで実行力を持つ大人や企業と組む。そうするとすごく良いシナジーが生まれます。まさに世代のダイバーシティです。誰かが何かを搾取するのではなく、みんながハッピーになるように分かち合っていかないと、こうした取り組みは続かないのかなと思っています。

中道:もともと日本はそういう文化を持っているんですよね。

山田:そうなんです。SDGsが言われる前から、日本人はお米の中には神様がいると信じて食べ物を大切にしていました。でも、なぜかそういう精神を持つ日本が食品ロス大国になってしまっている。それは気づく前の自分も含め、日本人に当事者意識が欠けているからかなとも思います。日本という国が素晴らしすぎて平和ボケしてしまっているのでしょうか。

毎年500万トン以上も、食べられるものが捨てられている。それがコンビニやホテルのビュッフェが大半の話だと思われがちですが本当は約半分が家庭から捨てられているんです。日本は人口が多いので一人一人のポーションが少なくても、それが積み重なると300万トンぐらいになってしまいます。

逆に、フードロスの正しい知識を蓄えて、一人ひとりの行動が積み上げられるとすごく大きな変化になります。もともと日本人はものを大切にする気質を持っているので、SDGsよりもIDGs(Inner Development Goals)がうまくトリガーすればよくなっていくのではないかと思っています。

文=久野照美 編集=鈴木奈央

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